白鶴酒造株式会社の3号工場・工場長の伴さんに教えてもらう 【3/5】

「F1カーは高くていいものなんだけど、普通のスーパーには入りにくいし…」

湯川:日本酒って、本当にいろんな種類がありますよね。お酒の選び方を教えてほしいんですけど。例えば「私、お酒とか飲むの、初めてで~。日本酒って何がいいですか?」っていう若い子には?

伴:香りが華やかな大吟醸か吟醸か、あるいはスパークリングタイプとかをお勧めするでしょうね。

湯川:それは、何と一緒に飲んだらいいんでしょう?

伴:やっぱり、刺身とかが合うでしょうね。

湯川:日常の食事にいちばん合うお酒は?

伴:うちで言うと「まる」かな~。

湯川:じゃぁ、「私は、日本酒が大好きで」って、味にも銘柄にも詳しそうなおばちゃんには?

伴:うちで言うと、「天空(※)」とかのグレードの高い大吟醸でしょうかね。でも「天空」も大吟醸の中では香りをおさえて飲食に合うように造っているお酒なんですよ。
(※天空…超特撰 白鶴 天空 純米大吟醸 山田錦)

湯川:え、ちょっとまって。じゃぁ、「天空」と「まる」の美味しさの違いってなんですか?

伴:そうですねぇ…クルマに例えると、「天空」などの大吟醸(なかでも“新種鑑評会”で金賞をとるような大吟醸)はF1レースで勝つクルマ。でも、日常の運転には向いていないんです。高い酒はお酒そのものを楽しむ場合はいいんですけど、飲食をするには、ちょっと酒が勝ちすぎてしまうんですね。飲食のときに合わせるには、食材をひきたたせる酒のほうがいいのかなと。

湯川:なるほど…!

伴:酒の香りが立ち過ぎていたら、刺身の味も変わるでしょ。だから、やや辛口で香りも控えている。

湯川:もしかして、それが「まる」なんですか。 じゃぁ「まる」って、毎日の食卓を想像されていますよね、焼き魚とか、コロッケとかがある。「まる」は、そんなときに、美味しく飲めるお酒ということ?

伴:そうです、そうです。日常シーンをイメージしているお酒だから、やや辛口で、香りも控えてある。普通の酒よりも、アルコール度数も13度と、他よりも2%ほど低くしているんですよ。

湯川:そうすることによって、多少飲んでも、飲みすぎない!

伴:ま、まぁ。そうですね。

湯川:私ね、ギリギリバブル世代で。あの頃の感覚って、高いものが良いものだ! みたいな。だから、今でもついつい日本酒も高いものがいいものだ! って、思ってしまうんですけど。私たち軸で、飲むシーンに合わせてお酒を選ぶことができるんだなって、わかりました。

伴:そうそう。F1カーは高くていいものなんだけど、普通のスーパーには入りにくいし、縦列駐車しにくいでしょ。 私は、ポルシェとか乗ったことないんですけど…そんなもんでしょ?

湯川:あぁ。そっか。確かに。私は、軽トラがいちばん落ち着くもん!

伴:そうですね(笑)。とりあえず「まる」は、日常シーンで飲食されるには、お勧めの日本酒ですね。

湯川:うんうん。

伴:あとは、そうですね。「白鶴杜氏鑑」という山田錦を原材料にした、とてもオーソドックスな高級酒があります。これはスポーツカーではない、街中を走る高級車という感じでしょうか。飲食シーンにもよく合うし、とてもグレードの高いお酒ですね。

湯川:なるほど!

伴:あとは、「特別純米酒の山田錦(※)」かな。
(※特別純米酒の山田錦…特撰 白鶴 特別純米酒 山田錦)

湯川:違いが分かるようで、わからない…だって、どちらも、原料は山田錦でしょ?

伴:「白鶴杜氏鑑」は、アルコール添加酒なんです。日本酒は本来、純米酒だったんですけどね。戦時中に経済的な事情で国策として日本ではアルコール添加酒を普及させたんですね。それで日本人が、その味に慣れていって、アルコール添加酒の方が日本人の口にあう飲みやすい酒になったんです。

湯川:え? でも、今では、どのお酒も造っていいわけですよね。それでも、アルコール添加酒の方が人気ですか?

伴:そうですね。純米酒よりも、アルコール添加酒の方がいいという方が多いですね。純米酒は、少し重くて濃すぎるという印象を持たれる方もいて…。

湯川:今の風潮でいくと、「添加」よりも「純米」の方がいいとかいうイメージなんですけど…

伴:そうですか?

湯川:あ、でも「アルコール添加酒」と「純米酒」の味を比べてみたことはないかも。

伴:それはぜひ、比べてみてください。純米酒はね、少し酸っぱんいですね。品評会でも、純米酒では上位にはならないですね。後味が残るというかな。

湯川:キツメのおばちゃんがやってきた感じ?

伴:う~~ん…熟女って感じかなぁ。

湯川:これから、純米酒は熟女酒って呼んだ方がいいかな。

伴:そうですね(笑)。純米酒は、少し、癖がある感じかな。まぁ、味の好みなんですけどね。うちで造っている純米酒は純米でも酸をおさえて飲みやすくしているので、美魔女っていう感じですかね(笑)。

次頁は
「もともと『ちびちび』が日本人の酒の飲み方だったんですね」

3/5ページ