コラム集

【有相無相】~DEMOくらし発酵部 福部長~

【有相無相】とは…現象と心理、姿や形をもつものともたないもの全てを意味する言葉です。
このコーナーではいつもは様々な方に語っていただいていますが、今回はDEMOくらしライターの私が語ります。

こんにちは。DEMOくらし発酵部福部長です。

 

畳のへりや敷居は踏まないで。

茶道で言われ、昔、親にも言われたのをこの歳になって思い出した。

へりには綺麗な柄があったり、敷居などは傷みやすいからだと思う。が、それ以上にそこから先は違う世界、空間が広がっている気がする。

茶道では、亭主と客、家ではここからは私の部屋など、あらゆるところに見えない結界がある。それを見ることができるへりは、なんとなく安心できる境界線だ。

茶道で、畳のへりに客が綺麗に並ぶのを見ると、可笑しくなるのは私だけだろうか。右へならえ!と畳に並ばされている感じがし、畳はヘリを使って私たちをコントロールしている気になってくる。子供が畳の上で遊びまわり、へりや敷居を踏み散らし、障子に穴を開ける。雪見障子のさんは、よく見ると折れたのをボンドでくっつけてある。それはそれで許されるらしい。畳は全てをあるがままに受け入れてくれる。

世の中にはいろんな境界線が張り巡らされている。カフェの扉、駅の改札、会社のドア。その境界線を越えると、何かをする自分に変わらなければならない。家に帰り、畳に座り、へりの中にいるとほっとする。へりの中は何も変わらなくていい。何もなくていい。そこは自分だけの結界、自分だけの空間になるから。

畳は、いつもありのままの私を受け入れてくれる存在だ。

【 DEMOくらし発酵部 福部長 】
1973年兵庫県生まれ尼崎育ち 発酵部副部長 とことん日本酒好き。阪神淡路大震災を機にOLをやめ、オーストラリアを一年程バスで一周して、ヨーロッパとアジアを3ヶ月ほど散歩。求人広告制作、派遣社員を経てNPOで地域貢献中。阪神杭瀬で古民家再生しながら尼崎を応援中。二児のおかん。日々人生発酵中。