【たたみなヤツら】黙って私たちの暮らしを見つめている。

文:野崎安澄

ズシリと重い。凹凸のある表面は、触るとひんやり冷たい。
茶葉を入れて、ゆっくりとお湯を注ぐ。蒸された茶葉の香りが湯気といっしょに漂ってきた。

南部鉄器の最初の印象は“重くて手間がかかる”だった。初めて手に入れた南部鉄器の中華鍋は、水で洗ったらすぐ乾かさないと錆びるから、と警告されていた。時々、表面に油をぬってあげたり、まぁ、手のかかる子だった。

「あのね、最近の南部鉄器の急須は、中がコーティングされていて錆びないんだよ」(大和牧美)

なんだって?! よく見たら色もカラフルだし、どうなってんだ?

聞いてみると、海外でもそのデザイン製の高さから「IWACHU(いわちゅう)」という名で大人気らしい。

そんなこんなで、南部鉄器好きの人と話し始めてみると、出会いからその魅力まで嬉々として話し続けて、とまることがない。

中2の時、美術の教科書で初めて見て一目ぼれしたこと。結婚式の引き出物で頼んだ時の喜び。(福部長)
決して安いものではないので、小さいアイテムから買い始め、やっとポイントをためてお気に入りの鉄瓶を買ったこと。(大森ちはる)

無機質の美、鉄の存在感。
何世代も受け継がれていく鉄器は、こうやって人々の想いが吸い寄せられて付喪神になっていくのかな。

最後に「あなたにとって『南部鉄器』とは?」

「家に入って、見た瞬間に落ち着くんだよねぇ」(大森)
「一生もん。用の美。実用的に美しい。とにかくずっと使いたい」(福部長)
「震災以来、気に入って、使いやすくて、美しいものを日常生活で使おうと決めたんだよね」(大和)
「ちゃんと暮らしている感」(大森)
「人生を黙ってみている人」(福部長)

なるほど。昔も今もこの日本の家の片隅で、南部鉄器はじっと黙って、私たちの暮らしを見つめている。