商店街に畳を敷いての大宴会 「第13回姫路元気畳座」

文・結崎 志穂

自分たちが本気で楽しむのが、まちのため。

まちをおもしろくしたい人たちで、10年目。

早々と店じまいされた商店街の店先。どこからか人の背の高さまで積まれた畳たちが運ばれてくる。ポリタンク、食べ物などを積んだ台車も行き交い、通りの片側によせて敷いた畳の上には長机。あっという間に人が座り始め鍋の準備やら食べ物が並べられる。

姫路の畳座は、姫路の友人に誘われて知った。
姫路市民、商店街の商店主、観光客がともに姫路のまちを盛り上げようとするイベントで、今回で13回目の開催。参加人数はなんと約550人!

少し気になって、尋ねてみた。
「…これだけの参加人数のイベントを運営するにあたっていろいろな団体のとりまとめや意見の調整が大変なのでは?」
「いろいろあります。10年経った今でも」
と、にこやかに答える実行委員会コアメンバーの玉田さん。

企画運営は有志たちで作られた姫路畳座実行委員会。「本気でまちをおもしろくしたい人を全力でサポートする」NPO法人姫路コンベンションサポートや、姫路駅前広場を委託運営する「ひとネットワーク姫路」、商店街の理事メンバーなど様々だ。実行委員会コアメンバーは7名。これらを設営ボランティアや出店業者などのサポーターが支える。
最初は平成19年の商店街のビアガーデンイベント。もっと楽しくならないか…。ただの飲食イベントではなく、城下町姫路なのだから畳を敷いてはどうだ? ということで畳座が始まった。

多彩な姫路衆たち、延々続く畳は300枚!

各ブース(座)の席札を見ると、市の広報、産業局、企画政策推進室などの行政も多い。商会議所、証券、保険、不動産の一般企業、地元の信用金庫、銀行、ホテル、ロータリークラブ、各商店街の振興組合、ケーブルテレビ局。バレーボールチームやダンススクール、河合寸翁(※)顕彰会、お酒と食べ物を楽しむ会など趣味の会と称する個人の集まりも、メンバーを見れば地元の名だたる企業の経営者や商売人の重鎮、いわば姫路の顔役が集まっている、まち衆の宴といった感じ。中播磨とのつながりから宍粟市、市川、福崎、神河町、遠くは赤穂市の行政も参加している。

システムは、予約申し込みで席を取る。参加費は2,000円で会場で使える1,000円の金券付きだ。飲み物、食べ物は持ち込み制が基本。事前予約が必要だが、カセットコンロのついたしゃぶしゃぶ鍋一式や、オードブルセット、屋台ではおつまみ、お酒も販売されているので手ぶらで来ることができる。今回は地元も含む中華や串カツ、唐揚げ、和菓子の出店もあった。

開催時間は19~21時までの2時間。だらだらとしない。わっと楽しく19時にはすでに大宴会状態、そして21時が近づくと早々と撤収が始まり、ゴミ捨て、片付けも鮮やかに。22時頃にはすっかりと元通りの姿となる。翌日の商店街の営業に支障が出てはいけない。自分たちのまちだから。

地域イベントは各商店街や校区や自治会ごとに分断されがちだが、畳座では各商店街の振興組合の人たちもお互いに尽力し、何よりも参加者各自が人まかせでなく、自分たち自身が楽しむために取り組んでいる。総畳枚数300枚。 運搬、搬入に重すぎるので本畳ではない。少し薄いビニール畳である。

※ 河合寸翁……河合道臣は、江戸時代後期の姫路藩家老。寸翁(すんのう)は晩年の号。酒井氏四代に50年余にわたって仕え、姫路藩の財政再建に貢献した。

「よく来てくれた、まぁ座れ」帰りたくなる場所がまたできた。

畳座の魅力を参加者に聞いてみると、「目線が下がり、いつもの商店街が自分の家みたいに落ち着く空間になること。まわりに仲間がいて、畳座に来た、あるいは同じ姫路でも知らなかった人とも仲間になれること」だそう。姫路の人と畳の持つ力が一体化して、私にとって、なんとも居心地のよい空間になっていた。

地元色の濃い宴会で、観光客や外国人は参加しにくいのではと思ったが、システムがわかればグループで予約するもよし、当日席もある。よそから畳座に来る人は、目が合ったり、気になる座に勇気を出して「何の会ですか?」と声をかけてみよう。すぐに「よく来てくれた、まぁ座れ」と村の祭りの夜が展開。旨いものを共に食し、酒を酌み交わす、話をする。ハイ、これでもう姫路に知り合いができた。

次回ここで会う顔を楽しみに。帰りたくなる場所がまたできた。

交わらせていただいた皆さま

第13回 姫路元気畳座
日時:2018年5月25日(金)19~21時
場所:商店街の通路(御幸通り×二階町商店街)
主催:姫路畳座実行委員会(Facebookページ次回は2018年秋に開催予定だそうです。