白鶴酒造株式会社の3号工場・工場長の伴さんに教えてもらう 【5/5】
「酒を注ぐのはね、新しい人と知り合い、話をするきっかけにもなるでしょ」
湯川:そうそう。先日、みんなでお花見をしたんですよ。畳屋さんで畳表をもらって、それをゴザにして。日本酒とマスをもって行きました。
伴:いいですねぇ~~。
湯川:花見に「日本酒とマスとござ…」って、もうね。死ぬほど楽しかったんですよね。「ビールに紙コップ、ブルーシート…」とはぜんぜん違う、くつろぎ感があるというか。「あ、マスの中に桜がはいったよ~」みたいな会話がうまれたりして。

湯川の花見の様子
伴:あぁ。なるほどね!「日本」が付く商品って、日本手ぬぐい、日本酒、日本刀、日本庭園…くらいしかないんです。あんまりないでしょ。だから、日本酒ってね、日本人であることの喜びを感じさせるツールとういうかね。そういう時の脇役なんですよね。
湯川:あ! 外国では日本酒のこと「SAKE」っていいますね。だから別に「酒」でもいいはずなのに、わざわざ日本を付けて「日本酒」って言いますね、私たち。
伴:そうでしょう。日本古来の400年の伝統を持つ日本酒を飲むということで、日本の花見という習慣はさらに素敵なものになるんでしょうね。
湯川:ところで…最近ね、女性社員にお酒を注がせるとか、批判があるじゃないですか?
伴:え、そうなんですか?
湯川:知らないんですか? 伴さん、セクハラ~とかって、嫌われますよ。
伴:うちはね、男性もお酌しますよ。
湯川:でも、お酌をするのは、下の人が上の人にするという感じでしょ?
伴:いやいや、そんなことはないです。立場とか関係なく、酒は注がれたり注いだりします。
湯川:え、そうなんですか。
伴:日本酒はね、自分で注ぐのは「はしたない」という考えがあるんです。
だから…自分の酒がなくなって飲みたくなったら、誰かのところに注ぎに行くんです。そうしたら、相手も注いでくれるでしょ。そうやって、みんな注いだり、注がれたりしているわけです。
湯川:あはは。それ面白い! そっか、自分が欲しい時は、自分から注ぎに行くんだ!
伴:そうそう。
湯川:でも、なんで日本酒は、手酌は「はしたない」…なんでしょ?
伴:お酒はね、「飲むもの」ではなくで、「いただくもの」という考えだからでしょうか。
湯川:あ! そっか。お酒は「いただく」だ! お酒は神事で使うものでもあるし、神様からのものなんですね。白鶴のみなさんからしたら、自分たちが大切に作った、恵や宝物をいただく。そんな感じですか?
伴:そうですねぇ。まぁ、たまぁ~にプライベートな時は「手酌でいきましょか」みたいな時もありますけど…基本は注がれた酒をいただくんですね。自分で注いではいけない。日本酒って、そういう文化なんですよ。
湯川:やっぱりいいなぁ。
伴:酒を注ぐのはね、新しい人と知り合い、話をするきっかけにもなるでしょ。社長やお偉いさんに、いきなり話をしにいくのも失礼ですよね。でも、酒があるとスムーズにできる。
湯川:ですねぇ。
伴:うちも年末の宴会には、社長も参加するんでけどね。そんな時、新入社員でも、社長にお酒を注ぎに行って社長と話をしたりする。お酒がなかったら、なかなか話ができないような人にも、気軽に関わることができる。お酒は、コミュニケーションツールなんですよね。
湯川:そうですね。日本酒が美味しいから、日本酒に戻ってくる。というものあるかもしれないですけど。「日本酒を飲むのは楽しいよ。会話も弾むよ!」みたいな。確かにそういう雰囲気がありますよね。
伴:そうそう。おちょこを持って、ちびちび飲む。で、色んな人に注ぎに行って話して。
湯川:そっかそっかそっか。だから、日本酒のおちょこは小さいのか。だって、ただ本気で飲むんだったら、メガジョッキでいいですもんね。
伴:ですね。あれは、ひとりでがぶがぶ飲めますね。(笑)
湯川:お酒は、飲む物のではなく、交換するものだ!
伴:そうそう。日本酒は、本質的に他のお酒と役割というか、ポジショニングが違いますよね。
湯川:もう、「酒」として売るのやめません? 交換するものというか。貨幣というか…!!
伴:あははは。いいですねぇ!
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