超・個人的感想とラベル表記を関連づけてみよう。(前編) 【3/4】

「『醸造アルコール』って…何でアルコールにアルコール入れるんですか?」

白鶴酒造の利き酒鑑定人 ウエタさん

アユコ:ラベルに「純米」って書いてのとないのとだと、ついつい「純米」のほうが良い気がするのは、どうなんです?

ウエタ:純米っていうのは、お米と米麹のみで作られているお酒という意味です。それ以外で使われる原料としては、醸造アルコールとか糖類とか酸味料などがありますね。純米って書いてある山田錦と蔵酒は米だけですけど、それ以外の商品についてはそれ以外の原材料が入っています。例えば、「まる」は糖類、酸味料も入ってますし。「淡雪」も純米なんですが、表示に純米と書けない理由は、炭酸ガスを充填しているからなんです。原材料として炭酸ガスを使用している場合は、法律上純米酒としては表示できないんです。

リエ:それで、「特別純米」ってなんですか?

ウエタ:特別純米ですね、そもそもお酒を作る米を精米するのに「精米度合」っていうのがあるんです。お米を70%よりもさらに削って60%とかものを純米酒って呼んでたのですが…

カナ:70っていうのは、残った割合?3割削る?

ウエタ:削る方です。ある時から法律が変わりまして、70でなくても可、そのかわり何%かはラベル上に書く。で、精米度合いで60%以下まで削っているもの、もしくはそれに代わるようなもっと変わった作り方とか、何か特別な点があれば、特別純米酒と呼んでいいんですね。例えばこのお酒だと精米度合いは60ではなくて70%なんですが、日本の中で酒米では最上級とされている兵庫県産の山田錦を使っているので、特別純米酒とつけています。

アユコ:精米度合いが下がれば下がるほど、味の精度が高いということですか?

ウエタ:お米の約7割はデンプンなんですね。で、15%がタンパク質とかそういうもので、あとは脂質とその他の成分です。タンパク質とか脂質とかは、微生物によって分解されてアミノ酸等になります。そのアミノ酸は酵母の発育に必要であったりとか、旨味とかに必要だったりするんですが、多すぎると味にとってマイナスに働くんです。なので、大吟醸用にはもっと精米度合いが低いものを使ったりします。

カナ:淡雪って、精米度合いって他のと変わらない感じです?私ほら、ベッタラって言ってたでしょう?あれって外側に近いところを使ってるからかなって。

ウエタ:そうですね、別にドンドン公表はしてないですが、お米の甘さを出すのに、70よりはちょっと黒めの…あ、削ってない部分が多い米を「黒め」って呼ぶんですが、それかなと。

リエ:その白とか黒とかいうお米の色って、お酒の色にはでないんですね。

ウエタ:淡雪は、見ると色の違いは分かりますよ。

リエ:3番の生貯蔵酒のラベルに書いてる「醸造アルコール」ってなんですか?

ウエタ:醸造アルコールがあまりいいイメージが持たれないんですが、純米酒に比べるとやっぱり仕上がりがスッキリして、旨味があって飲みやすさが上がります。あと、最後に出した燗酒も、あえて純米酒とは書いてないですが山田錦100%ですごく贅沢な作り方してるんですよ。

リエ:いい素材で完成した酒をちょっと崩してシンプルにする、粋さとかかっこよさを狙ってる感じかな…

ウエタ:この6本目の「杜氏鑑」っていう名前ですが、杜氏の鑑、杜氏のお手本になる人という意味で、中澤杜氏鑑という、現代の名工と言われた杜氏鑑が最後に手掛けたお酒です。これは市販ではなく、資料館とかネットとか、直営店のみで販売しております。今回は燗酒で出しましたが、冷でも美味しいので、1本で色んな味は楽しんで頂けると思います。山田錦三種類並べるだけでも面白いですよ。

アユコ:キリッとして口当たりがよくて美味しいですね。ちょっと小料理屋さんとかお蕎麦屋さんとかにありそうなイメージ。

ウエタ:美味しい贅沢なお酒なんですが、醸造アルコールって書いてあると、それだけでダメって方もおられて。

カナ:醸造アルコールって名前が悪いよね、何か助っ人外国人選手みたいなさ。

リエ:何か、知らない人が聞いたら添加物みたいなイメージですよね。

ウエタ:ホワイトリカーとか、穀物でつくる、焼酎とか、そういう普通のお酒と同じで法律上の呼び方の問題だけなんですけどね。

カナ:しかし、こうやって飲み比べていくと、この蔵酒が私もう無理かも。

ウエタ:日本酒がお好きな方は、やっぱりこのヘンが人気なのですが。

日本酒好きに人気らしい「白鶴 蔵酒」(5本目)

カナ:これって「一回結婚考えてからフられた感じの味」のやつでしょ?何かちょっと立ち直れない感じのガンとした…いくとこまでいっちゃった感じの(笑)

アユコ:酒で酒を忘れ…るぐらいじゃないと無理な味よね(笑)

というか…全ての酒のコメントが失恋例えって、また中々ない試飲会で…(笑)

アユコ:あの…前から聞きたかったんですが、お酒の名前って、だれがどうやってつけるんですか?「まる」って、こうやって他のと並んでてもラベルがひらがなっていうか…◯って記号やし…あらためて、どうやって決めるん?って思って。

ウエタ:確かに当時は結構問題になりましたね。記号で◯ってどういう意味や!と社内でも結構物議を醸したというか。

カナ:当時って?

ウエタ:えっと1984年ですから約35年前ですかね…その頃有名な書家の方でそういう円を書くような方いましたよね…禅で円があったりとか、親しみのあるようにとか。
あと、これの14度ぐらいのアルコール度数は、今では主流ですが、当時は「こんな薄い酒飲めるか!」と社内でも難色がでてました。でも開発担当が「これからは絶対こういう軽い酒が主流になる」となんとしても発売したいと押し通したらしく、結果としてその通りになってるんですよね。しかもこの赤いパッケージというのも当時はなかったんです。ので、いまでは棚の紙パックでは赤が主流なのですが、トレンド作りましたよね。当時は◯だけじゃくて角もあったんですよ。今は辛口の◯とか純米の◯とか、実は色々あるんです。黒のバージョンもあるんですよ。

アユコ:そんな前なんですか?あっ、でも昔からありますもんね。黒ラベル、そういえば買ったことないかも。ちょっと試してみなくちゃ。

ウエタ:あとラベルに書いてあるポイントとしては…山田錦とか米の名前が書いてある時は原材料米に特徴がある場合。生貯蔵酒とか生酒とか生って名前についているのは、製造じゃなくて貯蔵方法なんですよ。どんなお酒でも、出来上がりを絞った段階でまず一旦火入れして、貯蔵熟成させて半年後ぐらいに商品になるんですが、以前は技術上の問題で生酒が流通できず、瓶詰めする前にもう一回加熱殺菌、要は2回火入れしていたんですね。今では流通技術も発展しまして、できるだけ生で貯蔵して生酒の風味を保ちつつ、瓶詰めのときに1回だけ火入れして、生貯蔵酒としての新鮮さを保ってちゃんと販売できるようになったんです。だから大吟醸の生貯蔵酒とかもありえる訳です。純米とか醸造とかいうのは特定名称酒で、これは作り方とか精米度合いによる分類で、それ以外では生酒とか、生貯蔵酒とか生詰めとか言われるものになります。生酒は一度も火入れをしないもので、生詰めは一回火入れをして貯蔵して、火入れをせずに瓶詰めするものです。

カナ:流通先のお店の冷蔵庫が発達したからこれが販売できるようになったってことなんですか?

ウエタ:これは30年前ぐらい前に、冷蔵技術が未熟でも流通できるようにと、技術開発して生まれたお酒なんです。今は冷蔵技術が発達して、ようやく生酒でも普通に店頭販売できるようになったということです。

カナ:30年前とかいうと、そこまで流通も発達してないですよね。

ウエタ:そうなんですよ。ぜひとも生の貯蔵酒を、この味の酒を全国に流通させたいということで、開発されたのがこれという訳です。思い入れのある商品、実は私も好きな1本です。

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「前編に登場してくれた日本酒たち」

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