【有相無相】とは…現象と心理、姿や形をもつものともたないもの全てを意味する言葉です。
このコーナーでは様々な方に自身と畳の関係について語っていただきます。
今回、寄稿いただいたのは建築家、大工、デザイナー 3名からなるユニットTATE(テイト)です。
畳は身体の記憶、皮膚の泊
私が自然と人里や人同士等々、「境界」にすごく興味があり、そのエッジにかっちりした茶席をセットして、自然界と人界の狭間で両方を眺めつつ茶の湯を楽しむ…っていいなって。これがこの界雲席の出発点です。
ただ、自然の中に建築空間をつくると大袈裟。軽やかにしたいなと。
じゃあもう野点でいいじゃないとなりますよね。でも、野点だと何か野性的に微妙な落ち着かなさがあるし、しかも野点は建築空間じゃないでしょ。建築家としてはあくまでも建築的じゃないと(笑)。
茶室から余計なものをどんどん削っていったら、野点の手前で最後に残ったのが畳だったんです。界雲席では「身体的感覚としての畳」が非常に重要です。壁や天井、それっぽいフレームがなくても、身体が畳の上=室内のような感覚を覚えていて、畳に座ると無意識の安心感で、周囲の景色が借景として見えてきます。侘び茶で言う「市中の山居」(都会にいながらにして山里の風情を味わう)っぽく…
と、あれこれ考え抜いて残した畳。でも、ポンとそれだけを地面に置いたら…これ、どう見ても野点なんです(笑)。なんなんだ?だったら茶室と野点の境界線はどこなの?と探ると、水平性の確保かなと。地面から少し上、安定した水平の畳のステージ。大自然の中、ピンと真っ直ぐ座って、集中。畳に触れてるから室内の意識があって、飛びすぎない。この皮膚で「とどまっている」感覚。この支脚の設計にこだわりぬいて…ここが界雲席の隠れた肝なんです。元々自然のあるところに置きたいと思って作っているので、支脚の付替えもできて、タイヤ付けたら走るんですよ。短期間だけど湖上に浮かせて置くのもいいかなとか。
夢なんですけどね、ウユニ塩湖に置いたら境が訳わからなくて危険なぐらいカッコイイだろうなと。
ということで、分解してポンと車に積んで、いつでもどこへでも行けるようになってます(笑)。雲のようにふわっとエッジに舞い降りたり飛び越えたり、自然も国境も関係ないくらい自由で軽やかなスケール感で「界雲」と名付けたので…って、かっこよく言いすぎですか(笑)。
【 TATE(テイト) 】建築家、大工、デザイナー 3名からなるユニット。日本文化を現代の価値観で再構築をすることを目的とし、はないけとうつわの展示イベント「はなうつわ」や、ポータブル茶席「界雲席」の開発・販売を行う。また、界雲席を用いて各地で茶会を催し、新たな日本文化のニーズを開拓する。日本文化の世代にニーズを生み、それに必要な技術や職人を次世代に繋げたいと願い、活動中。
中村 喬(空間設計室代表) http://www.kukanarchi.com/
古川和弘(岡村建業代表取締役) http://www.okamura-kengyo.com/
木口和也(呑龍文庫ももとせ主宰・nMAKE inc.代表)http://www.nmake.co.jp/
【HP】http://www.tateinc.jp/tagged/kaiunseki/