ザ・夏マグロ対談 ― 2018年、夏。

文:やすかわのりこ
イラスト:みやもとあき

ザッブーン!!!

夏と言えば、海、海と言えば、マグロ、マグロと言えば日本酒、日本酒と言えば畳、畳と言えば、パンツ一丁で寝転ぶ至福の夏のひととき。
とはいえ、夏を背景にしたこの対談、『夏』が付くことで何が見えるんだ?




【オッス】

― この度、集まった夏男達を簡単に紹介しよう。

写真中央に座っているのが、神戸と西宮にお店がある畳屋さんの前田さん、彼の作った国産の畳の上に三人は座っている。

そして前田さんの右隣には、日本酒国内シェアNo.1の酒造メーカー、白鶴酒造株式会社の杜氏で醸造の最高責任者の伴さん、つまりお店に陳列されているあの商品の味を創り出している人。わぉ!

最後に紹介する笑顔がとっても優しいこの方こそ、「夏マグロ」というアンチなネーミングを黒門市場から運んできたマグロ専門店魚丸の店主、丸山さん。この耳慣れない言葉がこの対談の発端になったのだ。

前田:「畳と言えばイ草ですが、イ草1本1本の中に、スポンジみたいな繊維がつまっていて、この繊維が湿気を吸ったり吐いたりしているので、寝転んでもサラサラするんです。昔から寝ゴザといって、布団の上にゴザを敷いて寝るものがあります。それを使うとエアコンいらずとまでは言いませんが、本当に涼しく眠れるんです」

伴:「昭和の初期頃、普通の酒をコールドと名付けて売っていたようです。さらに前は、冷やすということができなかったので、常温で飲んでいたと思います。それこそ江戸時代などは、ビールや他の酒がないですからね。冬は燗で、一年中、日本酒が飲まれていたでしょうね。
今回お持ちしたのは、夏向けの大吟醸です。普通の日本酒は、殺菌工程を2回行います。そうすることで、味が丸くなります。しかし、これは特別に殺菌工程を経ていないので、若々しい味わいを残したお酒になります。その若々しさが夏用となります」

丸山:「これは、ミナミマグロという種類で関西では、インドマグロとも呼ばれていましたね。今は、南半球が冬なのでオーストラリアの低温の海で取れたマグロです。脂がしっかりノっていて、すごく甘みもある。日本の夏の時期のマグロは、産卵の後で脂の抜けたマグロが多く、味も少し落ちるんです。そこで2年程前から流通しだした、このミナミマグロが夏マグロとして登場していくのです」

― 『夏マグロ』のおかげで、夏でも美味しい天然マグロが食べられるようになったんだな。オーストラリアの他、ニュージーランド、南アフリカからも空輸でやってくる。
なるほど、切り身なのに表面は艶ツヤで、マグロの赤が一層引き立つ、パッと咲くような華やかさに食欲をそそられる。

丸山:「目で見て食べるって言いますね。独特の色合い、深みのある赤とピンクのグラデーション。この色が人を惹きつけるのだと思います。天然マグロは口当たりがいいので、なんぼでも食べやすい。刺し身と大吟醸なんて、ぴったりだと思います。昔は上質の天然マグロが山盛りでしたけど、今はもう希少価値でしょうね、なくなることは無いけど少ない、その中でも天然のマグロを是非食べていただきたい」

前田:「天然と養殖が違うように、畳も国産と中国産とでは、香りと艶が全然違います。そして色。新しいときから違いますが、日を追って変わりゆく色の具合も全く違いますね。今座っている畳も国産のイ草で作ったものです。10年位前は国産のイ草を作っている農家さんが、全国で1000人おられましたが、ここ最近、激減してしまって。1年に100人の農家さんがイ草を辞めてしまったりする年も。今では、500人程しかいらっしゃらないので、90%以上が中国産のイ草で出来てるんです」

― 単純計算すると1年に100人ずつ減っていて、あと5年すると…ギャオス!!!


【弾む心】

― 『では、いただきます』

夏の大吟醸は、いつもよりキリッとした味わいで、後味はヤングマンさながらの駆け抜け具合で香りのテンションも高い。
伴さんは口の中でお酒を回し、やっぱりええ酒やと笑う。伴さんの酒回しが気になる前田さんの首は右を向いていたが、振り返れば丸山さんの細い目が酒瓶の色合いの美しさに、さらに細くなっていた。
夏マグロの品の良い脂と、フレッシュで薫り高い夏酒を国産畳の上で贅沢に楽しむ。ん?

伴:「良い吟醸はABCDで語れる…私が提唱しています。笑
日本酒のA、アミノ酸。この成分が美味しさになりますが、多過ぎると雑味になり美味しく感じられない。
B、ブドウ糖は、グルコースという物質で甘みの成分。これがしっかりあると甘みを感じる。
C、少し難しい部分で、カプロン酸エチルという香りの成分。これが吟醸香の特徴になるので、たくさんある。
D、あっちゃダメな成分とダメな味がない。

つまり!アミノ酸が少なくて雑味がなく、ブドウ糖がしっかりあって甘みがあり、カプロン酸エチルが十分高くて、香りが高い。ダメな味、成分がない。それが良い吟醸の4要素です」

丸山:「マグロの A、この赤身をまず食べていただきまして…この食感、噛むと少し口の中でネバネバと…これが本来のマグロです。肉質が良いと、粘りがある。
B、養殖と違って口の中に残らない、割とサラっと入っていくのが天然の特徴です。醤油がなくても食べられるのが天然。あっさりというか、クセがないというか。
C、ここに中トロもありますよね、際立って脂がギトギトしていない、ほんのりした甘さというかね。養殖だともっとオレンジっぽい、何か油を含んだような感じですね。要は、天然のマグロの特徴は、昔から赤身、中トロ、大トロの味の差がはっきり分かれていますが、今の養殖の特徴は、どこを食べても同じような味なのです。
D、良いマグロは、刺し身や寿司ネタなんかも分厚く切って、鉄火巻きにしてパッと食べたら美味しいですね。皆、薄くして食べますよね、もったいないからって」

― 大胆に厚く切られた夏マグロ。素直な私は、何も付けずにそのまま食べた。だって知りたい、嘘か実か。

あぁ、神様。彼は、嘘をついてはいませんでした。本当にとても美味しいです。正直、マグロってここ数十年程好んで食べていなかった。理由は、赤い割に身がずくずくで、味は水っぽく生臭い、そいつにわさびをしっかり効かせて醤油で食べる、そんな食べ物だったから。

前田:「この醤油をつけた時にパッと広がる感じが、すごく好きです。お刺身食べたら絶対日本酒ですよね、僕は、いつも一升瓶を家に置いているんです。六本入でしたっけ?一升瓶がドーンと入っているケース。僕、出身が田舎なので常に家に置いてあって、誰か来たらそれを出してきて、宴会が始まるという流れですね」

― 皆で揃って、美味しいものをいただくと、みんなの顔が明るくなる。心は弾むし、もっと話していたくなる。

前田:「畳のA、産地がある。
B、畳一枚あたりに使われているイ草の本数。普通4000~5000本位ですが、良いものだと1万本位、倍ほど入っています。そのつまり具合ですね。今座っている畳を触るとボコボコッとしていますね。これには約7000~8000本入っていますが、山と谷がくっきりしているのを見て、感じて、そうすると僕が言うのもなんですが惚れ惚れしますね。それだけたくさんイ草が詰まっている証です。
C、気持ち。これを利用する方が、どういう生活をされていて、何故これをお求め頂いたのか、そこを作り手がどれだけ想像して押さえていくか。気持ちは入ると思います。『畳を全部無しにして洋室にしたけれど、やっぱり畳が欲しい』というお客様がいらっしゃるんです。部屋に置いて使われるとのことなので、その場合、畳の断面から少し中身が見えるんで、そこはしっかり隠して見えないように工夫をする。利用状況を皆で考えながら作りますね」

伴:「私は、今まで畳がある部屋でしか生活したことがありませんが、最近は、畳のない家が多いと聞きます。その理由は何ですかね?コスト的なことでしょうか?」

前田:「どうでしょうね。コストよりは…古臭い


【内と外】

― あれまっ、自ら踏みましたね、地雷。あの頃は~だったとか、人は言うけれど、時代の流れが選ぶ物、選ぶ味がある。そして、海の外のチョイスも無視できない。
そんな風の中、あなたは何を選ぶ???

前田:「マンションのショールームに行くと、フローリングでソファー。シンプルだと設計する人にしては面白くない、ちょっと変わったデザインということだと、畳以外になってしまう。このシンプルなのが良いと僕は思っていますが、古臭いってイメージもあるようです。ところが、赤ちゃんが育っていく過程でフローリングだと、ハイハイしても足が滑って上手くいかない。でも、畳なら踏ん張りが効く。そうやって小さい時に鍛えておくと、しっかりと手先、指先まで鍛えられるので、その後の発育や体幹を育てていくのに、非常に良いものなんです」

丸山:「志向が変わっていきますよね。僕の場合、天然物は人に受けない、養殖が受けるのも、そういうところですね。今の時代は『天然の方が美味しないやん』と言う方もいらっしゃる。
江戸時代は、トロは捨てて赤身を漬けにして日持ちさせる、そこから始まった。それが時代の流れの中で、トロが逆に上がってくると、赤身を食べないようになった。最近はヘルシー志向で、再度、赤身が食べられるようになってきた。時代、時代で変わっています。
日本人の嗜好が変わってきたのか、昔は、食べ物も固くて歯ごたえのあるものが良い時代だったのが、最近は柔らかくて食感の良いものが好まれている。それはそれで、今の時代にはマッチしているのだなと。だからこそ、そこを逆に行こうかなと、しっかりね」

伴:「最近、海外から人が大阪に押し寄せていますが、黒門市場のお店では、いかがですか?」

丸山:「たくさん来られます。あちらは、大トロのドロドロが受けています。今の時代の流れがあって、向こうは、しつこいものが流行っているんでしょうか。
日本人には、反対に赤身や中トロみたいなヘルシーなものが重宝されています。
僕は、あんまり飲まない方ですが、飲みに行けば必然的に日本酒になります。そうすると、飲みやすくなってると思います。マグロと一緒ですかね…昔の日本酒に比べたら全然違いますね。飲みやすい。こういう好みの志向は、日本全国の北と南で分かれていますか?」

伴:「昭和40年代の感じとは全然違いますね。味はかなりあっさりで、飲みやすくなっています。好みの違いも昔はあったのでしょうが、今は、鑑評会がかなり重視されています。鑑評会の上位酒に向けて、ある一定の品質をみんな目指していきます。そうすると、全国の差がなくなりつつあって、少し寂しいですが、無視できないところで、痛し痒しですね。我々は、灘の酒を売り物にしていますが、こういうお酒が実の昔ながらの灘の酒ではないんです。わりと新しいタイプの酒で、こういうのを作っていかないと、お客様に喜んでいただけない。
畳業界にもニューウェーブみたいなものはありますかね?」

前田:「色や形を変えた丸い畳など、色々あります。僕は、古い人間かもしれませんが、やはり昔からあるこの形の畳が一番好きです。縁のない畳が流行るとか色々ありますが、今のこれ自体がかっこいいと思うんです。自己満足であるかも分かりませんけど。笑」

伴:「日本人が昔ほど日本酒を飲まなくなりましたが、マグロは増えていますよね?」

丸山:「消費は増えていますが、これも日本酒と共通するような。この夏マグロは昔のマグロという感じです。今、養殖のマグロが主流になっている中で、天然の本物の味を知ってもらいたいってのが、僕たちの本当に思うところですね」

前田:「日本酒を飲む機会が減っているように、家にみんなで集まって法事や交流する機会が減っていますよね。法事するから家をきれいに掃除してというよりも、皆で外へ食べに行くようで、お家の畳の上で人が輪になる風景は減ったように思いますね」

―なんだか、団欒の風景が薄墨で描いた絵のようにみえてきた。


【職人の真正面】

― 野生のイ草に選ばれたり、マグロは絶対またがなかったり、あっちの世界に行っちゃったり。職人が先か、人としてが先なのか?ちょっと覗いてみる?

前田:「畳屋にも技術的なものはあって、それは覚えていかないと…経験値は、大きいと思います。
技術と研究があるとして、杜氏さんは技術をもつ職人さんで、研究の人は技術と数値の両方を知っているのですか」

伴:「世の中に二通りの方がおられます。職人系の杜氏さんに造り方を尋ねると『説明できん、俺の背中を見て学べ』と返す。それでは、技術の伝承が難しいです。
我々、技術系の杜氏が目指しているのは、できるだけ言葉で、数値で、話をする。自分たちの後輩に、酒造りはこういうもんだと、書き物にして伝えることを目指しています」

前田:「どうしても経験には勝てない部分はありますか?数値で全部クリアできるのでしょうか?」

伴:「そうありたいと思っていますが、最終的には、人智を超えた世界に入っていきます。その領域は、人の手では触ることのできない経験と勘、あとは気持ち。そこを推し量るようにしていかないと、解らない部分ですね。
若い奴には『手作業をする時、気持ちを込めて作業しなさい。その気持ちが手から米に伝わり、米からお酒に伝わる。そして、最終的にこのお酒を飲んだお客さんの心に届くはずや』と。そういう時に、一番いい酒ができると僕は思います。それは科学的になればなるほど、科学では説明できない、そんな世界に近づいていくってことですね。…今の格好良かった?笑」

前田:「これまで自分にとって、畳とは、あって当然のものと思っていたんです。僕自身が、そう誤解をしていた。その誤りは、どんどん解けていっている。自分は、ゆでガエルの世界にいたのかもしれないと思っていて、まずは、畳の良さを一から伝える。畳って一枚、値段ではなくて、皆さん大した違いは無い。というふうに思われているようなので、国産と中国産の違いだとか、良いタタミは、良い飴色になってくるとか、先程話したようなちょっとした事から、少しずつお伝えできたらいいなと。
もう1回、最初からやり直しみたいなところです」

丸山:「冬マグロってよく言われますが、夏マグロは、一般的にイメージに無いですよね。夏の日本産のマグロは、産卵の後で脂が抜けて、それはそれで美味しいでしょうが、僕としてはいまいちで。
ミナミマグロの輸入の流通経路がしっかり確立された今、この夏マグロはこれだけ美味しいのに、なかなかメジャーにならない。それを美味しいんだから当然メジャーにしたい。やっている方としては、普通の事なんです。日本人ってブランド志向っていうのがありますやん。頭の中で大間って言ったら美味しいと思う。本当は、自分で実際に食べて味わって、『このマグロは美味しいな』という実体験がとても大事かと思います」

前田:「今日、お天気が良ければ海をバックに日本酒とマグロとイ草の香りを畳の上で楽しんでいただこうと、新しく畳を作ってきたのですが、雨で残念です。僕は説明が下手ですが、体験して感じてもらえる部分は、やはりあると思うので、そういう機会をいっぱい作りたいと思いますね」

【心意気】

前田:「今日に備えてでもないですが、先日、料理屋さんにマグロの話を教えてくださいと予約して、マグロばかりを5種類くらい、天然、養殖、インド、奄美大島、いろいろ並べていただきました。
その時、季節的なこともあるでしょうが、大間のマグロは有名だから、食べてみたいと思って。そんなのも、またお願いしますよって言うと『関西には入ってこない、東京で止まっちゃう』それに対して僕も悔しくて。そんな思いもあって、南の方から『見てろよ、こんなうまいマグロを広めてやる!』という気持ちがあるのかな、と思って」

丸山:「東京に負けたくない思いは、やはりありますね。東京はマグロに関してはプライスリーダーなので、勝てないんですよ。でも大間からでも流通ルートを引いて、しっかりとこっちが販売する。あっち側の人は、しっかり儲けてると思います。
僕たちは、馬鹿正直でも、傾きながらも頑張ってますから。笑」

伴:「私自身は、セールスマンではないですが、うちの商品はこんな商品ですよ。という動画を作って、アップしようかと考えています。それがお客様に造り手の気持ちをダイレクトに伝えられるんじゃないかな?と。インターネットの発展により、そういった可能性が広がりますよね。
伝えようとする間に介在する人が何人もいると、伝言ゲームじゃないですが、ずれていくんですよね。我々の感じている事と、ちょっと違うことがあります。それによって誤解されたこともあって、ジレンマというか悔しい部分ですね。
それと、かっこいいけど、本音じゃない表現っていうのは、お客様にばれているんじゃないかなと。例えば酒蔵見学での何気ない一言を覚えてくれていたりする。
しかし、営業では、そんな言葉では売れないという。でも、そういうところにお客様が共感できる部分があるのでは?そういう思いを何とか解消する方法を今、一生懸命考えています」

前田:「今はネットで幅広くご紹介もできますよね。たまにですが写真を載せると綺麗だけど、自分の思っている緑じゃないと思うこともあります。難しい部分ですが、お客様を裏切れないですもんね」

丸山:「結局のところ、普通は商品を見て買うものを見ずに買うわけですから、ホームページのサイトをどれだけ信用していただけるかが重要で、ネット販売=オートマチックなイメージですが、ネット注文の対応は全て僕がしています。
自分をもっと出して行けって言われるのは=信用なのかなって、そういう意味で気合いは入りますね」

― 見る人が見ればわかることを自身が理解しているからこそ、出汁の効いたお話しでした。

【可愛こちゃん】

― 素材が良いのはもちろんだけど、その魅力は人の手で活かされ広められる。それは、恋人とも家族とも違う、良し悪しを見極めるために積み重ねる経験や、人前に出るまでのひと手間、ふた手間を根気よく丁寧に素材と向き合う、もう一つの愛のメロディ。
当たり前に座るこの畳にもヘビー級の情熱が織り込まれている。

前田:「イ草も植物ですから、根っこは白くてネギと同じような感じで、先は枯れているんです。そこを除いた極力長い、イ草の真ん中の緑色のものだけを選別して織り上げる。そうすると焼けた時もきれいに焼けていく」

伴:「伝統産業の一つで日本人の心を一番感じていただける共通の部分だと思います。ある統計で『どういうお酒が好きですか?』と女性にアンケートすると、当然のようにカクテルやワインが上位に上がりますが『どういうお酒を飲んでいる男性が好きですか?』と尋ねたら、日本酒を飲んでいる男性が好きと言う。自分は飲まないけれど、安心や信頼を感じて頂けるのが日本酒かなと。畳にも同じものがあるかなと、畳の上に座っている男性が好き。笑
ある意味、日本酒は工業製品ではなく工芸品で、例えばピカソの絵と全く同じに美大生が模写しても、それは売れない。でも、ピカソが描いたとなると1億円で買ってくれるわけです。目で区別できなくても、その作家にお金を出しているわけです。そういうものが工芸品にはあると、ひしひしと感じます。だからこそ造り手として、味に、飲み心地にこだわり続けて、同じものでも白鶴のお酒を買いたいと思ってもらえる会社になりたいと思います」

丸山:「贅沢に作られていますね。日本人と畳、マグロ、お酒って何とも言えず、共通した部分がありますね。子どもが『ここのマグロ屋が良い』って言ってくれる、そういうのは僕でも気にしているし、言ってもらうと嬉しい。子々孫々まで、繋げていくのが我々の商売やし、その後の、子ども達が食べておいしかったって笑顔。それだけを求めてやっているような感じです。子どもは、マグロが一番好きですよ。僕らやったら『マグロのおっちゃん』と言われてますね。笑
人に愛着を持ってもらえたら、店に寄ってもらえる。すべての行動は食べてもらいたいからで、ネットで買われた方も、天然の日本産よりも粘り気があって美味しいと。それを熟成させて毎日ちょっとずつ晩酌しているらしいです。そんなグルメレポートをメールで色々送ってくださるお客さんもいらっしゃいます」

【目利き】

― その筋の人の常識は、いつの間にかどこかで分断されてしまって、私達には届かない。な~んてことがあるのなら、とても残念なこと。例えばそれは、本当の良さを知っていれば手放す必要がなかった畳だったり、伴さんの日本酒のあてがスナック菓子だったり、夏に生モノをネットで購入、ってのは、私サイドの目利きだよね?

丸山:「夏に生モノと言うと、すぐ劣化する風に敬遠されがちですが、ミナミマグロの特徴の一つに、1週間程度なら一般家庭用のチルドでも鮮度がもちます。しかも、味の変化も起こらない。そこには自分の目利きがありますよ。中でも、特に品質の良いマグロを仕入れます。それが目利き、それには経験が一番です。見て分からないですよ、マグロは回遊魚なので、何を食べているかで一個一個全く違います。だから、さばいて食べて判断する。もちろん魚体の形は、ラグビーボールの様な形がいいですね。尻尾の肉質を見て、腹を開けて汚くないか、腹が擦れてないか、最後は、見た感じの自分のイメージで『このマグロだ』と決めます。もう経験しかないです。だから、良いのを仕入れた時は自分も嬉しいし、仕入れられなかった時は、自分の気分も落ち込みます。ほら、豚まんのアル時、ナイ時みたいな感じです。やっぱりエエもん仕入れたら、ものすごく嬉しいです。『みなさん、いらっしゃいっ!』ってなりますよ。やっぱり自分も職人気質なのかな、と最近少し思うようになりました」

― ことばで聞くと簡単だけど、届ける側は、そんなもんじゃない。いくらでも手は抜けるのに、一向に抜こうとしない姿は、正義のヒーローより10倍かっこいい。ミナミマグロの入荷流通ルートができたからといって、目利きができなければ、どこの業者も販売できないなんて。さすがは、マグロなボディを持つ男。


【暑中見舞い】

前田:「畳が団欒の背景にあるといいなと思います。夏にパンツ一丁で畳にゴロッとなると、めちゃくちゃ気持ちいい。肌に触れてサラサラするような敷物は、今の住宅の中にそう無いのです。フローリングもカーペットも悪くない。でも、夏はサラッと爽やかに、冬はあったかい、天然の素材で季節に応じて湿度を調節してくれる機能を持った敷物が、畳だってことを皆さんに知っていただけたらと思います。結納や法事に使ってもらえるのも嬉しいですが、最近は家に畳がないからと、旅館に行って畳の上で走り回る子どもさんが結構いらっしゃるそうです。そんな光景を皆さんのお家の中で、いっぱい見て欲しいなと思います」

丸山:「風呂上がりに晩酌しながらや、子供たちがお盆に里帰りをして、皆で美味しい夏マグロをつついて食べている。そんな家族団欒の楽しいシチュエーションを強くイメージしているんです。みんなで美味しいものを食べるっていい思い出です。夏は、生モノを敬遠する時期ですが、安心して天然の本物の味を楽しんでください。日本というのは島国で、四季折々のマグロが食べられる素晴らしい国だと思います。この国に住む人にもっと美味しいマグロを味わっていただこうと思っています」

伴:「日本酒は冬に造り、春から秋にかけて寝かし、秋から飲むのが古典的な飲み方で、今も特に変わりません。
例えば、秋のお酒が30代~40代の壮年で寝かすことによって熟成した、丸みを帯びた味と言うならば、夏のお酒は10代後半~20代の一番若いピチピチした非常に香りが豊かで、ちょっと荒々しさのある味を秋が来るまでに楽しんでいただきたい。
もう一つは、米の年産で日本酒の味はかなり違う。これはあまり知られていませんが、食べるご飯の味を去年と今年の米とで食べ比べた時、違いのわかる人は少ないでしょう。しかし日本酒は、一昨年、去年、今年の米とでは、全く味が違う。そういう意味では、ワインは年産をとても大事にしますが、日本酒は余り大事にしない。今年できた酒は去年の酒よりも香りが高く、甘みがある。我々からすると全然違います。一番新しい年産の酒を夏のシーズンに楽しむ、今年はどんな酒だったかを確認する、面白みがありますよね。
日本酒好きの方もそうでない方もそんな目で日本酒を味わっていただくと、楽しみの幅も広がるかなと思いますね」

― 夏で始まったこの対談、いま何が見えますか?

この対談で、私は「ん?」を見つけました。謎が謎を呼んでモコモコと音を立てながらふくらんでいくみたい。でも私は確信した。謎を解くのって楽しい!

本日お集まりのお三方は、対談後に、この国に住む人にこそ、もっと触れて、感じて、知って、愛して欲しい。その体験が物だけにとどまらない、見えない豊かさに繋がることを、思い出から引き出して話してくれました。子どもみたいな顔してね。

『大きな経済の仕組みの中で、でも私の暮らしはね。』

これから始まる暑い夏、どちら様も快適にお過ごしください。

ひとまず、バイチャ!☆


「ていねいに暮らすを、たたみから」
株式会社前田畳製作所
http://www.maeda-tatami.com/

対談会場「コミューン99」の畳もあつらえてくださった畳屋さん。
先日、前田さんに直接ご指導いただいて、コミューン99の大掃除を行いました。
レポート記事: 編集部の畳を上げての大掃除 〜おうちでできる、畳掃除のしかた〜

「子どもたちに、孫たちに、おいしいまぐろを届けたい」
株式会社魚丸商店
http://www.uomaru.co.jp/thought/

昭和10年開業のまぐろ専門店。
丸山さんが目利きしたマグロは、日本全国、ホームページからお買い物できます。
もちろん、黒門市場の店頭でも。お店では、新鮮なマグロをその場でさばいてくださいますよ!

「時をこえ 親しみの心をおくる」
白鶴酒造株式会社
http://www.hakutsuru.co.jp

江戸幕府第8代将軍吉宗の時代からずっと、日本一の酒処・灘五郷でお酒造りを続けてこられた白鶴さん。
対談当日、マグロに合わせてお持ちくださったのは「白鶴 大吟醸 生酒」(商品ページ)。
夏にぴったりの爽やかな味わいで、8月までの夏季限定商品だそう。

執筆者プロフィール

やすかわのりこ(三木市在住・1973年生まれ)
やすかわのりこ(三木市在住・1973年生まれ)
趣味も特技も特になし。そんな私も20代は「歌で飯食う!」って決めてました。ライブ明けの帰り道、都会のネオンを見送りながら、「脱・田舎!」と心に誓い、ソフトな家出から大阪に流れ着きました。音信不通だったためフラリと実家に立ち寄ると、あるはずの自宅はなく、足元に広がった更地に言葉もなく立ち尽くす。なんてこともありました。笑