文:岩田かなみ
地元を離れてもうすぐ7年。
人口減少が叫ばれるこの街は、危機感に追い立てられるように都市開発が進み、私の実家は都市計画の一環で新しい区画へと引っ越しを余儀なくされた。
私が1人暮らしを始めた翌年のことだった。
通っていた小学校も、中学校も統廃合になって、目の前にあるのは、名前も校舎も新しくなった私が通ったことのない母校。
私は「黒歴史」という言葉が嫌いだ。
黒歴史という単語に包めば、どんな過去でもパッケージにできてしまいそうなその言葉の
便利さが憎らしく感じる。子どものことから不器用だった私にとって地元は黒歴史と表現
できる場所じゃなかった。
綺麗に並んだ新築の一軒家たちと公園、マンション、公共施設。
自分のホームグラウンドだと思えない景色と愛着が湧かない私の実家に自然と帰らなくなった。
ふと、ゴザを引いて空を見上げる。
“もうここに私が恐れていた地元はないみたい”
帰る度にちょっとずつ新しくなる風景、街並み。
嫌なことを思い出すような場所は、ほとんどなくなっていた。
地元だけど、新しくなっていく地元。
私には神戸に帰る家もできた。
恐くなっても、私が甲羅にこもるのはここではない。
だからこれからは、新しい地元に帰ろう。