コラム

もらえるんですか、ゴザ!?

文:大森ちはる

もらえるんですか、ゴザ!?

4月某日、リベルタ学舎の企画運営チームでお花見をしました。場所は、夙川公園。近くにあるJRの駅名が「さくら夙川」であるくらい、阪神間では鉄板のお花見どころです。桜の花を愛でる、春の訪れを歓ぶ。始まってしまえば飲みたい・食べたい・喋りたいの「花より団子」になるに決まっているのに、それでもその風流さに身を置きたくて、やってしまうんですよね、お花見。
今年のリベルタ学舎のお花見のテーマは「もっとワクワク」でした。大きなブルーシートの上で、買い込んだ大量のお酒と人数分の食べ物をドーン、というのが今や定番ですが、「お花見をする」だけではなく「そこに居る」ことの質感も、もうちょっと雅やかに楽しみたいと思ったんです。
空間をあつらえるにはまず視覚から。ちょうど、DEMOくらしのディレクター・河合さんがお花見におけるブルーシートに苦言を呈されていたタイミングでもありました。(→DEMOくらしディレクター・河合コラム『「花見」が青白い!』はこちら

ああ、なるほど、ゴザ! ゴザって室内で使うイメージがあったけれど、アウトドア用もあるかもしれない。そういえば、ここ、畳と暮らしのメディアだもの。さっそく、ピコソモドの藤(とう)さんに聞いてみました。すると答えは……
「屋外で使うなら、きれいな新品じゃなくてもいいですよね? 使い古しの畳表でよかったら、近所の畳屋さんに行ってみてください。畳の張り替えでいらなくなったものを分けてもらえると思いますよ」

え!? 使い古しとはいえ、畳表って、あげるとか譲るとか、そういうモノなんですか!? 藤さんはさらりとおっしゃいましたが、私はびっくり。「畳表ください」なんて、三十余年の人生で言ったことも見たことも聞いたこともなかったので。でも、藤さんいわく、「たぶんどこの畳屋さんでも、気軽にくれるはず」とのこと。昔から、作業現場での休憩用などとして、大工さんや職人さんにお分けする文化があったんですって。へえぇぇぇ!

実際に畳屋さんを突撃!

「ごめんくださーい」半信半疑でとある畳屋さんを訪ねてみました。お店の中には一人のおじさま。目を細め、入ってきたのが完全なる一見さん(私たち)であることを捉えると「へ?」と首を傾げられました。そうですよね、そうなりますよね。「かくかくしかじかで、使い古しの畳表があったらいただきたくて……」と切り出すと、「あー、はいはい! ここにあるので、好きなだけどうぞ!」と快く案内してくださいました。

くるくる巻かれた畳表たち。広げてみると、ヘリは切りっぱなしで、中には表と裏でだいぶ色の違うもの(色褪せたんでしょうね)もありましたが、どれも外で使うには十二分なほどにきれいです。10人弱で座るには6畳分もあれば足りるかなと、ありがたく6枚いただいて、お店を後にしました。

くつろぎのお花見空間
それらを敷いたリベルタ学舎のお花見模様が下の写真です。じゃじゃん!

道ゆく人々には「え、ゴザ!?」と二度見三度見されることもありましたが、ブルーシートがゴザに代わるだけで、この風情。いかにも敷いている感じがせず、視覚的な馴染みの良さが、落ち着きをもたらします。

ゴザ、見た目に温かみがあるだけではなくて、上がり込んで座っていると実際に温かいんです。もちろんゴザが発熱するわけはないんですが、い草のクッション性も相まって、からだが保温されている感じ。ブルーシートって座るとひんやりしますものね。あの冷たさにずいぶん体温を奪われていたんだなぁと、ゴザの上で数時間過ごして初めて知覚しました。

そして、何と言っても、居心地がいい! むかしから知ってる肌触りのせいか、自然とみんな、くつろぎモードです。寝そべる人もいたりいなかったり。友だちの家にいるみたい。畳表6枚=6畳の広さに10人足らずという密集感、車座の真ん中によりどりみどりの食べ物&お酒、学生時代を思い出させます。

そりゃあ、不便さもあります

良いことばかり書き連ねましたが、使い勝手ではブルーシートに軍配が上がります。そりゃあ、みんな使いますわ、ブルーシート。だって、軽いし、かさばらないし、処分が簡単。

ゴザは、重いです。家にある体重計で量ったら、畳表1枚(1畳分)で1.7kgありました。畳表を譲っていただいた畳屋さんとお花見をした場所は電車で30分の距離だったたのですが、「(ゴザ班のか弱い女性2人で)6枚いっきに電車で運ぶのは無理やね」と、結局、行きは車を出動させました。これが6畳サイズのブルーシートだったら、たったの700gちょっと(Amazonで調べました)。らくらく電車で運べちゃう。雲泥の差です。

加えて、ゴザはかさばります。ゴザとして作られた製品はたためるものもあるかもしれませんが、畳表はたためません。くるくる巻くほか、持ち運びようがない。ゴザひとつ持つだけで、大荷物です。短辺で巻いても長さ90cmあるので、処分したくなっても、45リットルのゴミ袋に入りませんしね。畳屋さんには、「いらなくなったら、持ってきてくれたらウチで処分しますよ」と言っていただきましたが、まあ、何にせよ、手がかかります。

ヨガマットのごとく、ゴザを

集まる人数、運搬手段、準備や片付けにかけられる手間……いろいろな要素が重なって「便利さ」を優先することが適した場面はたくさんあります。だけど、いつもいつも「便利さ」を最優先に据えるのではなく、たまには「不便さを楽しむ」姿勢を持つのも「豊かさ」じゃないでしょうか。目先の不便さよりも、その先にある情緒や五感の快適さを。暮らしの余裕、気持ちの豊かさ。
この日は、帰りは「欲しい!」と挙手した6人が1枚ずつ、自転車で、電車で、ゴザを抱えて帰りました。ゴザを抱えて自転車で疾走する人、電車内でゴザを抱えた集団、さぞ目立ったことでしょうね。

レジャーにゴザを。ヨガマットのようにゴザを背負う人が当たり前にいる……そんな未来のために、DEMOくらしはこれからも草の根ゴザ運動を続けていきます。

執筆者プロフィール

大森ちはる(神戸市在住・1982年生まれ)
大森ちはる(神戸市在住・1982年生まれ)
夫とひよこ(娘・4歳)と3人暮らし。2017年春、新卒以来10数年勤めたシステムエンジニアの仕事を離れました。機嫌よく気前よく、生きたい・書きたい・働きたい!