【たたみなヤツら】ルーツに戻れ、ひとに優しく。

文:ひだかわかこ

畳に使われる「いぐさ」の9割が中国産となり、国産のいぐさを使った畳が高級品になってしまったように、“たわし”もかつての姿とは大きく変わっています。

たわしは、棕櫚(しゅろ)というヤシ科の植物から作られていました。しかし、より安く手に入る海外産のパームヤシや化学繊維で作られるようになり、今や私たちが普段スーパーで目にするたわしは、パームヤシからできた物がほとんど。細々と棕櫚のたわしを作り続けるメーカーもありますが、原料の棕櫚は中国産。国内では棕櫚を栽培・生産する農家もいなくなっていました。

そんな中、和歌山県でたわしを作りつづけてきた髙田耕造商店は、10年ほど前に“国産の棕櫚でたわしを作ろう!”と一念奮起。棕櫚の栽培と加工の知識を持つ職人を探し出すところから始め、荒れ果てた棕櫚山を再生させるなど苦労の末に国産棕櫚のたわしを復活させたのです。

このたわしをお風呂に持ち込み、体を洗うのに使ってみると・・・“たわしは硬い”という思い込みをひっくりかえす、その“柔らかさ”にびっくり。ほどよい肌への刺激がリンパの流れまで良くしてくれそうで体を洗うのが楽しい!農薬を使っていないので、体だろうが根菜だろうが安心してゴシゴシ洗えます。

畳も、たわしも、そのルーツに戻とこんなに人に優しくなるんですね。

髙田耕造商店では創業70年を超えた今も、たわしなどの家庭用品をひとつひとつ職人が手作業でつくっています。紹介したたわしは「紀州産棕櫚束子(しゅろたわし)」です。

髙田耕造商店


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