い草コースター作りにハマりました。

文:中埜 久仁子

ドえらいものを借りてしまった。
い草の織り機セットが届いたとき、心からそう思った。
い草も、まして織り機も触ったことのない人間がそう簡単に使えるものではなかったのかも?
おまけに取説も入っていない。
でも簡単にあきらめないのが私の長所だ。YouTubeで調べると、取説になりそうな動画がいくつか見つかった。
なぜ織り機を借りたのか。そう聞かれると、写真がステキだったからと答えるだろう。
所要時間30分程度とも書いてある。

公園deゴザチャレンジのFacebookより写真を引用

あまり深く考えないで、写真を投稿していた公園deゴザチャレンジに問合せした。
「全国の畳屋のイベントで貸し出ししているものですが、有料でレンタルも可能です」と回答が返ってきた。
その後、レンタル費用と送料を払い、件のドえらいものが届いたわけだ。

IT技術の進歩に感謝するしかない。ネットで検索しながら見様見真似で織ってみる。織ったら糸を始末し、また糸を張る。試行錯誤を経て何枚か完成し、回を重ねるごとにスムーズに織り上がるようになった。
スムーズに織れるようになると、コースター作りが止まらない。「糸を張る→織る→糸を張る→織る」を繰り返す。コースター作りが楽しい。織り機セットを返却するまでは単純にそう思っていた。実際、返却日が近づくとこのまま借り続けたい衝動にも駆られた。

でも、要るのか? い草の織り機。

なぜこんなに楽しいのだろうか?
い草の癒し効果か?
織り機のシステマティックな構造に感動したからか?

どれも正解に思えるが、実は違う。

コースターを作っていると「無の境地」に入れるからだ。い草は交互に差し込まないときれいに織れない、糸の張る作業は面倒な手間と指先の器用さが要求される。その作業に没頭すればするほど、くだらない悩みや不満は吹き飛ぶのだ。煩悩が頭から消えるのだ。

レンタル期間は、何度か無の境地に至った私だが、悟りは開いていない。
今、私に残ったのはたくさんのコースターだ。

執筆者プロフィール

中埜久仁子(神戸市在住・1968年生まれ)
中埜久仁子(神戸市在住・1968年生まれ)
生粋の大阪人。小学生の娘を持つ高齢ママ。20年ほど広報の仕事をするも、現在は六甲山の麓で人生修復中。子どもたちの笑顔と旅とお酒が好き。阪神ファンではありません。