【『日本畳楽器製造バンド』~ライブ@修徳公園】

文:やすかわのりこ

雨上がりのアスファルトと砂の相性はいまいちなんだけど、砂はスニーカーの靴底に張り付いて「ここにいてんだ」って足の裏に絡んでくる。

2018年9月某日『日本畳楽器製造バンド』ライブ@修徳公園
京都の畳創作職人である西脇一博氏率いる世界で唯一の楽器演奏ユニット。使用される個性豊かな楽器を自らの手で創作し演奏する。『見て、聴いて、触れて』楽しみながら日本の伝統工芸の素晴らしさを改めて世界に広めてゆく。目指すは『世界総畳化』。
ライブでどんな楽器と音に出会えるか、パフォーマンスも楽しみだ。
午後12時。定刻通りイベントがスタート。会場準備をてこずらせた大粒の雨は、見事に止んでしまった。

■ライブバンド日本畳楽器製造
現在153名のメンバーが在籍しており、その中にはロボットや犬と幅広い。海外公演などもしており「日本でも、海外公演でも意外なほど反応が良い事に驚きました」と西脇さん。素朴な質問をしてみた。

❔ 畳で楽器を造ってよかったこと→畳と音楽でいろんなコミュニケーションが生まれたこと。❔反対にそうじゃなかったこと→休日がなくなったこと。
世界総畳化を掲げたバンドマスターは忙しい。

これだけの大所帯なのだから、メンバー内で本番当日に「初めまして」も多々あるようだ。合同練習は年二回集まれる人達で行う。全ての人が集まって練習できる場所を見つけることも難しいだろう。しかし、ライブが始まると安定の演奏力でプレイヤーからは硬さを感じない。日本でもポピュラーな洋楽に日本語の歌詞を付けアレンジした曲は、幅広い年齢層が楽しめるような工夫が感じられる。畳への揺ぎ無い思いを乗せたオリジナルナンバーがラストを飾った。

■玄人と素人とその間
頭が混乱していても、あんよは上手だ。前に進む度、蹴り上げる足が右と左、砂を巻き上げる。好き嫌いもあるだろうが、それより一本の筋も見つけることができなかったことが私を惑わせる。違和感の正体を体の記憶から手繰り寄せる。感じたかったのは愛と情熱と一途さだ。私の持つ畳の知識は少なく、音楽は愛好家。それでも、目に見えるもの、見えないものから作り手の思いが伝わる瞬間は確かにある。私は、感染したかった。一瞬でもその熱に浮かされたなら、好みなんて遠くの山に飛んでいくんだ。次、会うことがあるのなら、その時はいい汗一杯かいて「参りました」って言わせて欲しい。生意気でごめんなさい。