どっちがいい? どっちもいい?! 古風なあの人とフリースタイルな彼

文:中村容子

衝撃、、青い顔した畳さん

大阪の実家を出てから、ちょうど20年。

新しく借りた神戸の一軒家にて、再び畳に出会うこととなる。

とは言っても、

それは馴染みのある畳とは様子が違った。

部屋の周囲は、まさかのフローリング。

そして、中央に正方形の畳が4枚。

しかも、鮮やかな青色の顔をしている。

なんともハイカラさんな畳なのだった。

畳さん、もうご遠慮くださいませ〜

私が育った実家では、祖母と私だけが畳の和室。

友人を招くのにも、ただただ恥ずかしかったことを思い出す。

当時の私にとって畳とは、

「暗い」「怖い」「お経を唱える場所」「辛気臭い」「おじいちゃんおばあちゃんの部屋」

そんなイメージしかなかったのだ。

なんとかしてそんな畳の部屋を

「キラキラと輝く(ように見えた)、姉の洋室のように変身させたい!」

そんな小学生による奮闘虚しく、

畳の発する圧倒的な「和」のパワーには屈するしかなく、あえなく断念。

そしてもう一つ。

大学時代を過ごしたアパートは、

家賃2万円の、トイレ・風呂・台所が共同の四畳半一間。

そう、「貧乏」を象徴するのも畳だったのだ。

どちらも思い出として懐かしく笑えはするのだけれども、もうこりごり。

これからの人生において、畳さんにはご遠慮いただきたいというのが本音だった。

この再会の日までは。

見事なイメチェンで再登場!

私の前に再び現れた畳の印象は、強烈だった。

洋風にリフォームされた家に、

「ここにいて当たり前」と言わんばかりに溶け込んでいたのだから。

和の代表である畳が、洋風の家に馴染んでいるこの不思議。

なんだかイメチェンに成功した、昔の彼氏に再会したような。

そのお洒落感にほだされ、

いとも簡単にこれまでの畳の概念は覆された。

昔の記憶もぶっ飛んだ。

自分の単純さに笑ってしまいながらも、

満足感いっぱいに、新品の畳の上で寝転んでみる。

窓から広がる青空を眺めながら、

あぁ、引越しの疲れも吹き飛ばされるわ・・

なんて思いつつも、そこではたと気付くことになった。

「あれ?畳ってもっとフカフカじゃなかったっけ?」

この疑問が気になったままでは、ゴロゴロタイムが楽しめないよ!

人生いろいろ 畳もいろいろ

そんなわけで、私の住む街にある平松畳店さんを訪ねてみる。

突然の訪問にも関わらず、平松さんが丁寧に教えてくださった。

そうか、そうだったのか!

「鮮やかな青」

その見た目が斬新すぎて、つい畳の表面だけに気をとられていたけれども!

人も畳も同じ。

中身が大事だったのだ。

つまり、畳の内側の「畳床(たたみどこ)」の違いが、

主なフカフカ具合の差ということ。

聞くところによると、

昔は稲わらを40cmほど積み重ねたものを

5㎝まで圧縮してつくられていたのだとか。

空気を多く含むために断熱効果があったり、

自然に部屋の空気を循環させてくれたり、

足触りのいい柔らかい風合いになったりと、聞けば聞くほどいいこと尽くめ。

でも今は、昔の製法そのままにつくられているものはほとんどないそうなのだ。

なぜ?昔ながらの畳床が少なくなったワケ

一つ目の理由は、材料を揃えることが今の時代では難しいということ。

稲作の機械化が進み、質のいい状態の稲わらを確保しにくいのだ。

二つ目は、職人さんの高齢化。

稲わら本畳床は、なんと一畳30kg以上!

そんな重い畳を扱いにくいということも減少の一因。

そして三つ目は、住宅環境の変化。

かつては木や土でできた土台や壁、部屋を仕切る襖や障子も調湿効果のあった日本の家屋。

現代の気密性の高い住宅では、湿気を大量に吸う畳はカビが発生しやすく敬遠されてしまうことも。

理由としては、大きく分けてこの三つとのことだった。

※「じゃあ藁床の畳を、一般家庭に取り入れることはできないの?」

工夫次第、お手入れ次第で可能にもなるので、お近くの畳屋さんに相談くださいね!

自然素材じゃないからこその魅力も

そんなわけで、最近では様々な素材で様々な畳が生まれている。

軽くて扱いやすい建材ボードやポリスチレンフォームなどの畳床、

それらをわらでサンドしてより畳の風合いを楽しめる畳床などなど。

このような小さな見本であっても、

かなり重さや質感が違うのがわかる。

こんなふうに様々な畳が存在するからこそ、

住宅に合わせて、そして畳とどこまでうまく付き合えるかによって、

自分にぴったりの畳を選択できるようになっている。

面白いし、有難いね。

ゆっくりしなはれ~

さて、ここでまた我が家の青色の畳に帰る。

生まれて初めて、畳を持ち上げてみた。

すると、非常に軽いのがわかる。

最初に「あれ?」と私が感じたのは、

やはり実家の畳とは畳床が違っていたということ。

そこで、この家をリフォームされた「いえにわ工房」の横関さんにお聞きすると、

この畳は「ポリスチレンフォームをインシュレーションボードでサンドイッチした軽量タイプの畳床」とのこと。

確かに。

質感は、幼いころに触れあっていた畳とはやっぱり違う。

でもこの畳の存在は、私の日々の生活を潤わせてくれている。

畳が目に入るだけでも、ほっこりと安らぎを感じられるからだ。

そして時に、椅子やフローリングではなく、

畳の上でゴロゴロするという、日本人ならではの何とも言えない幸せを味わうこともできる。

「どうぞ。たまには力を抜いてゆっくりしなはれ~」

と畳さんが声をかけてくれるので、

「あら、では遠慮なく・・・」とくつろぐ。

面倒な掃除やカビの発生を気にすることなく、こんなふうに気軽に畳を楽しめる。

そんな醍醐味があるのなら、この選択肢もいい。

とてもいい。

人の温もりが畳から

では、昔ながらの畳は、今の私にはどんなふうに感じるのだろう?

とあるお寺を訪問してみた。

掲載はNGだったにで、そこで私の感じたことをお話してみたい。

昔ながらの稲わらの畳は・・・

落ち着いた和室にいるのにおかしいかもしれないが、

なんだかワクワクした。

数十年ぶりに全てを新しく替えた畳と、

畳床はそのままに、畳表だけを新しくした畳。

感触が全く違う。

どちらも建材ボードなどの畳と違って、

本来の柔らかさや風合いがあるのはもちろんなのだが、

私が面白いと感じたのは畳床が古い方。

畳表が替えられたので、見た目はもちろんきれい。

でも、場所によって柔らかさが違っているところや、なんとなく凹みを感じるところがある。

畳に「人」を感じるのである。

そこを歩いた、座った、寝転んだ・・・

実際に見たわけではないけれど、そんな情景が自然に目に浮かぶ。

だからこそ、人が生きる様を感じ、温もりを感じる。

そんな奥深い、畳の世界。

私もいつか、日本人が長く愛した畳を取り入れてみたいとふと思う。

今は気軽でお洒落な畳に満足しながらも、

またいつか

子どもの頃に反発した、どっぷり「和」の畳に浸るのもなんだかいいなと。

今は、そう思える。

そう思う自分が、何だか嬉しいのだった。

執筆者プロフィール

中村容子(神戸市在住・1979年生まれ)
中村容子(神戸市在住・1979年生まれ)
大阪府出身。夫と二人暮らし。足圧整体やヨガ、スキンケアなどをお伝え中。山のお散歩とマキコレワインが大好きです。