特別コラム

「花見」が青白い!

文:DEMOくらし運営ディレクション・河合義徳(♂)

特別コラム「花見」が青白い!

サクラ咲くこの時期、いろんな人の心が見える時期でもある。

新たな門出だったり、新年度の始まりだったり、見るもの香るもの漂うものにあたたかさを感じたり… 以前、身内に癌が見つかって、そもそも誰もが一生のうちでサクラが見られるのは数えられる回数であることをしみじみ感じたり…幸い完治して今も元気な身内を見て、この時期にサクラが見られる「あたりまえ」にすごく感謝するようになったり…

サクラの表情は、見る人の「心」によって表情が変わってくる。

その中で、「残念」な表情が昨今の「お花見の情景」に垣間見られるのだ。

咲き誇るサクラの木の下で、会社・サークル・地域社会などの団体が、大盛り上がりの「お花見」…これはこれで、個人的にも大好きなこと。家での暮らしの大半が洋式化し、家でも職場でも椅子に腰掛ける日常生活において、みんな一緒に地べたに座って酒を酌み交わすのは、いつもとは違う親近感もあるしね…

ところが!だ…

数年前から、大阪城公園や靱公園などの大きな公園で、たくさんの団体が酒盛りしている一人ひとりの表情を見て、大きな違和感を持ち始めた。

陽気に楽しんでいる全員の顔が「青白い!」
地べたに座って見上げた時のサクラも「青白い!」

もはやどこか病的な青白さなのに、みんなが笑っている…ナニ?この違和感…世界征服を狙うショッカーによって心を奪われた人間の、薄気味悪い笑顔のシーンを思わせる。

理由はすぐに判った

「ブルーシート」や!

新入社員が昼間から場所取りしている時点で、公園全体が「青い!」…サクラ色よりも青が主張している。

ブルーシート…もちろん、便利ですよ。安価やし、地面が湿っている場合なんて衣類が濡れなくて済むしね…うん、便利、便利… しかし、これだけモノが溢れ、便利であることに馴れすぎていると…何か大切なことを失っていないやろうか…。

実家にも当時の写真はもうないが、幼少の頃に母と祖母が連れて行ってくれていた京都御所でのお花見は、赤い不織布のようなものを敷いてくれていた。しかも、今のように気軽にコンビニ弁当やケータリングなどもなく、早朝から用意してくれていたお重箱のお弁当が今となってはとてもありがたい愛を恵んでくれていたなと…

そんなことも思い返すと…「お花見の場所取り=手っ取り早くビニールシート」…今の常識は、本来のあたりまえを壊していないだろうか…

皮肉にも、天気が良ければ良いほど、ブルーシートからの照り返しによって、人もサクラも青白くなる。せっかく「お互い地べたに座って親近感が漂う時間」なのだから、人もサクラも、本来のあたたかな表情で過ごしたいもんや…もう、こうなると「花見ブルーシートのみの敷き方はどないやねん運動」を草の根から始めるか。

ブルーシートの上に、ゴザや畳などの自然素材、赤い不織布を敷くなどのヒトテマ…
結局は「手間」というのも、「人の心」の表れということなんやろう…


あるお方が兵庫県神戸市にある布引の滝で見つけた、若者のピクニック風景。
う~ん、素敵ですよね。(編集部)