畳シートに座ってみれば。

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<<< 友は、古ゴザをご存知なかった。

1畳ゆえ、無限大の広がりが。

大森: 畳シート、SNSでかなり好評ですよね。

川合: ほんとうにありがたいことに、Twitterで2万件以上「いいね」をいただいています。正直、こんなに反響があるとは想定していなくて。ブルーシートの光景に違和感をお持ちの人がたくさんいらっしゃったんだなと。気づいていなかっただけかもしれないけど、違和感を諦めなくてよかったです。

大森: わたしの友人は「1畳だと家族で手狭だから、2畳サイズがあるといいな」と言っていたのですが、そういう声も届いていますか。

川合: サイズのご要望はそれはもう、たくさん。わたしも最初、2畳サイズもつくりたいなと思っていました。ただ、プリンターの制約で、幅ががんばっても1畳分しかつくれなくて。それと、芝生は広い面積を覆うと呼吸ができなくなって生育によくないとも言われているので、最終的に1畳のワンサイズに。

大森: 畳シートは、畳と同じように短辺と長辺は1:2なんでしたっけ。

川合: はい、そうです。できる限り幅広でつくってもらって、京間1畳と同じ大きさです。

大森: じゃあ、2畳で正方形になりますし、3畳や6畳敷きも、いろいろお客さん自身で楽しめますね。京間って大きいんですよね、たしか。(スマホで調べて)江戸間は幅87.9cm、京間は95.5cm。うちの畳ってどのサイズなんだろう。でも、京間より小さい気がします。

川合: 畳シートどうしを連結できるようにスナップをつけることも企画段階では考えたのですが、その部分が破損してしまったらそれで終わりなので、やめました。

大森: むしろ、畳シートに惹かれる方は、スナップがなくても、2畳なり3畳なりを敷く楽しみを味わってくれそうな気がします。先日、JR三ノ宮駅でホームに上がるエスカレーターに乗っていたら、たまたま向かいのエスカレーターから筒状に巻いた古ゴザを抱えた女性が下ってきて。混んでいたのですれ違うときにハッと気づいただけだったんですけど、その胴の部分を輪ゴムの水引で留めていらしたんです。

川合: わぁ、そういう粋な心が伝播していったら、ほんとうに風景が変わっていきそうですね。新幹線って、昔はみんな煙草を吸っていたじゃないですか。いまでは禁煙が当たり前になっていて、いま昔の話を聞くと「マジか」となる。同じように、お花見の風景を変えていけたらいいな、そのきっかけに畳シートがなれたらいいなと思っているんです。

ヘリに心意気を見た。

大森: さすがにこの白い床だと、畳シートもゲリラ感が出ますね。

川合: ゲリラ?

大森: DEMOくらしに「ゲリラゴザ」というシリーズがあるんです。いろいろな場所でゲリラ的にゴザに座って、その場で肌で感じたこと、「ここに座るとはどういうことか」と頭に降ってきたことを綴っていくかたちの。

川合: そのゴザって畳シートでもいいんですか。

大森: うーん、どうでしょう。「ゲリラゴザ」は見た目だけじゃなくて、座ってみてのコンテンツなので。古ゴザ(本物の畳表)の凹凸や質感、匂いが想起させる暮らしの記憶や気配、心地よさってやっぱりあると思うんですよ。視覚に特化すると、基本的にヘリがない古ゴザに対して、ヘリをもつ畳シートの方がより場とのチグハグさ―――ある種の結界?―――が際立ってゲリラ感が増すなぁって嫉妬しますが 笑。こちらのヘリ、色合いや柄は意図されたところはありましたか。

川合: まさに日本的で上品なものをと、ネットにあるヘリのカタログを片っ端から見て、この緑色と菊菱文様の組み合わせが1番しっくりきたんです。桜柄も候補に挙がったのですが、それだとお花見でしか使えないので。ピクニックや運動会にも馴染むように。脇役に徹してもらうものなので。

大森: ほんとうに織られたかのような糸の揺らぎや風合い、ヘリと畳表の境目の影の具合も、本物の畳の凹凸をよく観察されたんやなって感じ入りました。……ん? (ヘリを合わせて)これって!!

大森: すごい! ヘリの文様が合ってる!

川合: (ポカーン)

大森: これを合わせるのも、畳店さんの技量のひとつらしいんです。魂込めている畳店さんもいらっしゃるそうで。

川合: へぇ、おもしろい。わたしたちも、あまり大きくズレると格好わるいから、一応気にはしましたけど。

大森: 脇役の格好よさって目立たない―――意図せず違和感を抱かせない―――ことだと思うんです。ヘリひとつにも、畳の職人さんと相通ずるものがあるような。心意気、でしょうか。

(おわり)

編集後記

取材当日、古ゴザを持参して交歓しなかったことを心底悔やんだわたしとカメラマン・やすかわ。川合さんの「古ゴザにも座ってみたいです」を聞き逃さず、後日、(アポをとって)押しかけゴザしてきました。

1)川合さん、クルクル巻いた古ゴザをお見せするなり「座っていいですか」と広げてあがってくれました。真ん中をよけて座るあたりが、彼女の畳に対する感性なんだろうな。 2)「クッション性があって気持ちいいですね」「そうでしょ、そうなんですよ」と、しばしゴザ談義。「一畳あたり、ふつうの畳で4000本、いい畳だと10000本くらいのイ草が使われているそうで、その目の詰まり具合が凸凹のくっきりさにあらわれて、座り心地につながっているらしいんです」。夏マグロ対談で教えてもらったことを受け売りしてみたり。 3)「ああ、やっぱりこの香り、落ち着きます」。イ草の匂いにも心を留められていたので、ダメもとで「もしよかったらこのゴザもらってください」と申し出たら、こころよく受け取ってくださいました。畳シートの生みの親のくらしに、古ゴザが邂逅した瞬間。来たる春の川合さんのお花見には、畳シートに混じって古ゴザも敷かれるかも?(この古ゴザは、いつしか畳店さんで頂戴したものです。古ゴザを譲ってくださる畳店さんは少なくないと聞きます。座ってみたいかたは、ぜひご近所の畳店さんを訪ねてみてください)


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執筆者プロフィール

大森ちはる(神戸市在住・1982年生まれ)
大森ちはる(神戸市在住・1982年生まれ)
夫とひよこ(娘・6歳)と3人暮らし。2017年春、新卒以来10数年勤めたシステムエンジニアの仕事を離れました。機嫌よく気前よく、生きたい・書きたい・働きたい。