ゴザと柄杓がつなぐ縁 〜誘われて、お伊勢参り

伊勢神宮巡り逆回転。

団五郎茶屋のあとは、おはらい街にある、御料酒を納めている白鷹さんのお店「白鷹 三宅商店」へ。

御料酒である特別限定酒が角打ちでいただける場所だ。
白いお猪口になみなみと注がれるお酒。
アテとして出て来る塩。

伊勢神宮へと詣でる人々を、この場所で迎え続けて来たのだという。
店主の方は、この伊勢の地で生まれ、この地と伝統を守りながら生きると言うことへの誇りを語る。

帰り際、ゴザと柄杓を見せる。
おかげ参りのスタイルを目指して回っているんですよ、と伝えると、

「実は昔、おかげ参りを再現している大学生さんたちの講受け(受け入れ)をしていたんですよ」

え? それってもしかして奈良大学鎌田先生のゼミの学生さんたちですか?
今回、鎌田先生に電話でお話を聞かせて頂いてから来たんですよ。

「そうそう。奈良からみんな何日もかけて歩いて来ていて、道中にあるお店が受け入れをしていたんですよ」

偶然か必然か。まさかここで鎌田先生の物語と重なるなんて。
不思議なご縁が絡まりながら繋がっていく。

私たちがゴザと一緒に旅をしている背景として、畳のメディアの取材もしていることを伝えると

「畳と言えば賓日館かしら? 知っている? 伝統のあるお屋敷で、120畳敷の大広間は圧巻ですよ」

聞いた事もない場所。調べてみたら、正式な伊勢神宮巡りの出発点、禊をする夫婦岩の近くじゃないですか!

まさかの伊勢神宮巡り逆回転をすることになるとは……

「ちょっと、そこの君たち! それは何を持ってるんだ?」

翌朝、宿の近くの外宮へ詣でる。

本来の順番では、内宮の前に詣でることになっているが、なぜか私たちの運命は逆回転になってしまったのだ。

朝9時くらいに着くと、大型バス何台にも乗り合わせてスーツを着込んだ由緒正しそうな団体のみなさまに遭遇する。

掲げられている旗を見ると「静岡県神社庁」のみなさまだった。
みんな神主さんなの? それとも関係者なだけ?

そんな問いを持ちながら、続々と増える彼らより先に詣でてしまおうとダッシュで先を急ぐ私たち。

外宮の本殿を参った直後、外に出ると「静岡県神社組合」のスーツのみなさまたちが、ズラーーーっと一列に並んでいた。

「ちょっと、そこの君たち! それは何を持ってるんだ? ちょっと見せてくれ」

そのうちの1人に声をかけられる。ゴザと柄杓に緊張が走る。
不謹慎だと怒られる??

「あの、これは江戸時代のおかげ参りのスタイルで……」

とおずおずと説明すると、「へー」「はー」「そうなんだ」とおじさまたちが興味津々。ワラワラと近寄ってくる。
なぜかゴザを持ちたがり、一緒に記念撮影まで。

ホッと胸をなでおろす私たちとゴザ。
怒られるのかと思った!!

外宮内のお宮を一通りお参りをし、夫婦岩と賓日館に行くために参道を通り駅へと向かう。
途中に善哉を食べられるお店があり(2日目も善哉!)、畳の敷かれた大きな縁台? イス? に座って一休み。

そこから見えたおしゃれな洋風の建物がなぜか気になるので、道すがら誘われるように門をくぐる。
元々は旧宇治山田郵便局の局舎として利用されていた建物が、今は中庭を備えたフレンチレストラン・カフェとして使われているようだ。

庭に水撒きをしている女性がまたまたゴザに話しかけてくる。

「おかげ参りのスタイルってそうだったんですね。ゴザと柄杓…… 伊勢にずっと住んでるけど、知らなかったわー」

「みんな結構忘れちゃってるのね、私たちのこと」

とゴザがちょっと寂しそうに呟いた。

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結構いいところまで来たんじゃない? やっと出発点にたどり着いた私たち。