神話と日本酒 vol.02

神武天皇が海に酒を注ぐと、鳴門海峡の急流がたちまち鎮まった。(兵庫・淡路島)

文:原かおる 構成:大森ちはる

夫の地元・淡路島で暮らしはじめて早8年。
どうやら淡路島は、古事記の国生み神話で語られる日本発祥の地「おのころ島」であるらしい。
淡路島と四国のあいだにある鳴門海峡の渦潮も、いざなぎの命・いざなみの命が泥の海をかき回した痕跡なんだとか。

激しい潮流により発生する渦潮。
春は、渦潮が年間を通じてもっとも大きくなる季節だ。
毎年大潮の日に、航海の安全を祈願する「淡路島島びらき うずしおまつり」が開かれる。
今年は3月21日。私もガイドボランティアで参加した。


昔、神武天皇が東征の折り、鳴門海峡を渡ろうとしましたが、激流に阻まれどうしても渡ることできませんでした。そこで、神武天皇は新酒を海流に流し、海の神に「航海の安全」を祈願したところ、海面がたちまち静まり、無事渡ることが出来たという伝説があります。 (淡路島WEB「あわじしまウェブドットコム」より)

日本酒には不思議な力が宿っているらしい。うずしおまつりで行われる「酒樽流し」は、この故事にちなんだ神事。

強風に見舞われた当日。
この波の荒れようにより、酒樽流しは急きょ見送りになってしまったが、例年同様にお神酒をささげて桜鯛を放流することはできた。

「あぁ~もったいなぁ、あぁ~もったいなぁ」。海にお酒を流した瞬間にどこからともなく聞こえてきた、オーディエンスのおっちゃんの心の声。

お神酒には、淡路島最南端の南あわじ市でつくられている日本酒、「南長」(本庄酒造)と「都美人」(都美人酒造)が使われていた。


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