濃度、自然をコントロールする技術。〜 奈良県・美吉野醸造

「柿の葉寿司つくったから、花巴買ってきて」といわれるようなお酒を造りたい。

吉野を味わいに吉野郡川上村で、柿の葉寿司のお店を営まれている「大滝茶屋」さんへ連れていっていただきました。
奥吉野に昔から伝わる成法を 今もなお手作業で、続けています。
頂いたのは、「柿の葉寿し」と「山椒の葉とおジャコの佃煮」「椎茸と筍のとろろ昆布の巻き寿司」
そして、美吉野醸造さんの木桶仕込みの熟成酒「百年杉」。
地酒と郷土料理を味わいました。

内海  同じ柿の葉寿司でも吉野と五条の方では違うときいたのですが。

橋本  いや、たぶんお店によって全然違いますね。それぞれのスタイルが、やっぱりあるんで。お酒が蔵ごとに味が違うように、柿の葉寿司もそれぞれお店で個性があります。

内海  そうなんですね。そんなに違うとは知りませんでした。酢で〆る鯖寿司とは全然違いますよね。

橋本  そうなんですよ。ここは、海がないじゃないですか。だから昔、熊野(和歌山)から運んでくるのにたっぷりの塩につけないと腐ってしまうんです。だから薄くスライスしないとしょっぱすぎる。それをすし飯の上に乗せて柿の葉で包むんですが、包んだものを箱に詰めて上から重石をのせる。鮒寿司ではないんですけど、なんというんでしょうか、熟成。塩で熟れると味がまろやかなんですよ。知恵ですね。これもそうですが、やはり自然のものをコントロールしようと思うと濃度しかないんじゃないか思うんですよね。

塩で熟れた柿の葉寿司は、鯖の脂と相まってねっとりと味が膨らむ。
摘みたての柿の葉しか使わないのは、この店のこだわり。
爽やかな酸味の米の甘みを感じる。力強いお酒と口の中でとけあうと、それぞれが何倍にも美味しくなる。「出会いもん」という言葉が、頭に浮かんだ。

内海  この“百年杉”とあいますね。お酒とお寿司、一緒にいただくとさらに美味しい!

“柿の葉寿司にあうお酒を”と造られたわけではないが、最高の組み合わせじゃないかと思うくらい相性がいい。
吉野に実家があれば、帰省のたびに必ず味わいたいと思う。

橋本  ウチは吟醸酒、大吟醸という表現は、極力避けているんですよ。米の品種の表現も避けてきた。磨きも極力磨かない。70%の米で、酸の表現で味をかえています。いい酒の表し方もその土地によって、違うんです。米を解釈した蔵の考えかたが味になります。昔は、家で柿の葉寿司つくっていたんですよ。「柿の葉寿司つくったから、花巴(*13)買ってきて」っていわれるようなお酒を造りたいですね。

(*13)花巴(ハナトモエ):美吉野醸造の代表銘柄。花は「桜」巴は「広がり」の意味が込められているとされ、春になると山全体が桜に染まる様を表しているそう。酵母無添加。

美吉野醸造株式会社
奈良県吉野郡吉野町六田1238番地1「紀伊半島の中心・吉野川を臨む六田(むだ)に1912年に蔵を構えました。千本桜で知られる奈良吉野で豊かな自然の恩恵を受け、手造りだからこそできる『米の旨味が伝わる酒』を醸しております」
オフィシャルサイトより)