インタビュー・構成:山本しのぶ
珍しいだけじゃない。女性杜氏、外国人杜氏が醸す個性的なお酒を味わう(京都・丹後半島)
紹介してくれた「日本酒通」
森本和也(神戸和酒倶楽部ちょこ店主)
日本酒初心者から日本酒通まで、さらには杜氏や専門家も通う、神戸和酒倶楽部ちょこ(神戸・三宮)の店主。米を原料とする日本酒は、食べながら飲むためのお酒という信条のもと、日本酒の美味しさを引き出す料理と飲み方を提案している。
https://kdts000.gorp.jp
伊根湾に立ち並ぶ舟屋群のなかにある向井酒造
旅の行程
10:00 JRで福知山。京都丹後鉄道に乗り換え、天橋立駅へ。
11:30 日本三景のひとつ、天橋立に到着。松原の景色を楽しみつつ、海鮮たっぷりランチ。
13:00 天橋立でレンタカーをし、海沿いの景色を楽しみながら伊根まで30分ほどドライブ。
13:45 向井酒造へ到着。「京の春」は伊根でとれた鯖のへしこにぴったり。女性が杜氏を務める蔵。
15:00 伊根を散策。伊根で取れた魚の干物をお土産に購入。アジやイワシ、アオリイカも。
17:00 舟屋を改装した宿で、目の前に広がる海を眺めながら地元の海鮮と日本酒を堪能する。
09:00 伊根を出発。久美浜へ。穏やかな内海は牡蠣の養殖で有名。
10:15 木下酒造で試飲。イギリス人が杜氏を務める。ロックで飲む日本酒「アイスブレーカー」もぜひ。
11:00 久美浜でランチ。久美浜湾を見渡せるかぶと山には、地元食材を使ったイタリアンの店も。
13:00 天橋立へ向けて久美浜を出発。
14:00 天橋立に到着。日帰り温泉を楽しめる宿も多い。温泉で旅の疲れを癒してから、帰路へ。
(車移動中お酒を飲む場合は、かならず飲まない方に運転をお願いしてください)
森本さんによる解説
日本酒に合う料理を楽しむ旅なら丹後半島。いわゆる京都ではなく、「海の京都」ですね。いい蔵元もあるし、海の幸も美味しい。天橋立など、日本海独特の景色も楽しめる。さらに温泉もいいし。
古くからの漁師町の伊根は、舟屋と呼ばれる1階が船のガレージになった建物がずらっと並んでて、漁業と生活が近いこの土地ならでは。どうやって海とつきあってきたかの歴史がある。その伊根にあるのが「日本で一番海に近い」酒蔵「向井酒造」さん。女性が杜氏を務めてます。「京の春」は鯖のへしこやイワシのバーニャカウダーにぴったり。古代米を使った赤いお酒(「伊根満開」:数量限定)も作ってて、うちの店にも仕入れてます。夜は、これも日本独自の干物をアテに飲みたいですね。とり貝や岩牡蠣もいい。
次の日は、久美浜へ移動して「木下酒造」さんへ。「玉川」という銘柄で、この蔵ではイギリス人の杜氏さんがお酒を醸してます。珍しいだけじゃなくて、ここのお酒は味もしっかりしてるから食中酒としておすすめ。酒質がしっかりしてるので、海の幸というよりは山の幸。ジビエにも合うと思います。お酒の味を決めているのは、なんといってもその土地の「水」。そして職人の技。そこに料理と飲み方(温度、タイミング)が合わさって、最高の味わいが生まれるんだと思ってます。
“聖地“でサステナブルな日本酒をいただく(兵庫)
紹介してくれた「日本酒通」
辻本一好(神戸新聞編集委員)
神戸新聞社経営企画部専任部長、編集委員、「地エネと環境の地域デザイン」コーディネーター。長年、兵庫県の食に関わる現場を取材し、食の歴史、地理、文化的側面についても幅広い知識を持つ。毎月最終日曜神戸新聞朝刊に「風と水と土と ひょうごテロワール」を連載中。
https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/terroir/
「村米の旗」がはためく酒米の田んぼ
旅の行程
08:00 神戸・三宮からドライブスタート。
09:30 庭田神社(宍粟市)。播磨国風土記に日本最古の日本酒づくりの記述がある。
秋には「しそう日本酒まつり」が開催される。
10:30 山陽盃酒造(宍粟市)。「播州一献」の蔵元。
ショップのバーカウンターで有料・無料の試飲を楽しむ。「地エネの酒 環」も飲めたら。
11:45 富久錦「ふく蔵」(加西市)で地元素材を使ったランチをいただく。ギャラリーでは展覧会も。
「環」も飲みたい。
14:00 岡田本家(加古川市)。「盛典」の蔵元。酸味があり、ワイン好きにも人気。
「環」も飲めたら。
15:15 田んぼにはためく村米の旗を眺めながら、三木市の神戸層群観察地へ。
16:00 弓削牧場(神戸市)。カフェで絶品チーズデザート。日本酒を合わせても美味しい。
18:00 有馬温泉(神戸市)で宿泊。
江戸時代からの六甲山南北での酒づくりにおける米・水の関わりを妄想。
10:00 住吉川沿い(神戸市)を散策。復元された灘目の水車など見学。
11:30 宮水発祥ノ地(西宮市)に立ち寄る。
12:00 福寿の神戸酒心館による蔵の料亭「さかばやし」(神戸市)でランチ。
ここにしかない原酒も味わう。「環」も飲めたら。
15:00 「灘五郷酒所」(神戸市)で灘五郷26蔵から好みを見つける。
18:00 県庁近くの「地魚・地野菜・地酒 なん天」で旅を振り返る。メイン食材はすべて兵庫県産。
(車移動中お酒を飲む場合は、かならず飲まない方に運転をお願いしてください)
辻本さんによる解説
兵庫県の食や日本酒に関することを長く取材してきて思うのは、兵庫こそが日本酒の聖地なんじゃないかなって。外国のワインの専門家たちが日本酒について調べて、行きつくのも兵庫。いわゆる「ルーツ」がここにあると思ってます。まず、酒米。山田錦は昭和の初めにできた酒米なんですが、とにかくお酒が作りやすい米でいまだに超える酒米は出てきてない。全国550の酒蔵が兵庫県産の山田錦を使ってます。日照と気候条件、そして稲の栽培に適した神戸層群の地層が揃っている。加東や三木などの山田錦地帯を車で走っていて、村米の旗(契約栽培している酒蔵の旗)を見つけると嬉しい。
それから、六甲山の南側は、水。これには意味が2つあって、一つは急勾配による水流、もう一つは水質。住吉川など六甲山の急流河川の水車を酒米の精米に使うようになったことで、それまで10%くらいだったのが30%くらい米を削れるようになった。それで日本酒の質が飛躍的に向上して灘五郷が酒どころになった。いまある日本酒の作り方はここで確立されて全国に広がったんです。それから水質。宮水が有名ですけど、ミネラルのバランスがちょうどいい。あらゆる条件が全部揃ってた、だから江戸時代からずっと日本一の酒どころ、それが、ここ、兵庫なんだと思ってます。
実は、今回訪問する4つの蔵(山陽盃酒造、富久錦、岡田本家、神戸酒心館)は、「地エネの酒 環(めぐる)」というバイオガスを作る際にできる「消化液」を有機肥料として生産された山田錦を使った酒を作っている蔵なんです。消化液はチーズで有名な弓削牧場でできたものです。酒米って実はオーガニック栽培が遅れてるんですよね。でも、もともとは酒づくりってその土地の自然エネルギーを使ったサスティナブルなものだった。日本酒の世界に、そんな新しい流れができたらなって思ってます。
※「環」は2022年9月半ばから神戸阪急などで本格販売開始しています。詳しくは、「地エネnote」へ。
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