文:816号室 画像制作:十倉里佳
『お日様のしゃぼん玉』って言うんですって。歌っちゃうよね。
しゃぼん玉とんだ
屋根までとんだ
屋根までとんで
こわれて消えた
(中略)
風風(かぜかぜ)吹くな
しゃぼん玉とばそ
(野口雨情作詞・中山晋平作曲)
8 月の27 日、オンラインに登場するやいなや注文した新商品は『お日様のしゃぼん玉』。
菊の花のような輪っかが咲き、レモン色のまるに重なるデザイン。光の帯は 24 枚が三つ、16 枚が一つ、12 枚が二つだ。フォントは何か。静かなボトル。リキュールで日本酒でスパークリングで、きゃぴきゃぴ楽しむ、だけではないような佇まい。それは投影か実物か。
白鶴酒造の別鶴シリーズは、さまざまな部署の若手社員が集まり、『新しい日本酒の世界を覗こう』というコンセプトをもとに、開発をすすめてきたお酒。使ったのは、過去、実用化に至らなかったお蔵入りの 3 種の酵母だそう。密やかに、そっとそっと息づいてきた、尊い。今回は、さらにお客さんの意見を生かした2種のちっちゃなボトル達。
「最近アプリで彼氏ができたんですぅふふ」
世情背景に1 年半、職場以外の交わりの希薄さをうっすら薫らせ、若い可愛いナースちゃん。
「ねぇ、、うちも昨日夫と話して悩みましたねぇ、、」
いまはキレイに刻むモニター波形15cm を手渡してくれ、百戦錬磨のICU ナースさん。
「どこで出会ったんですかー?」×4
夜勤のノリはここからはじまる。朝まで滞りなく紡がねばならぬ、その気負い各々に。
「まずは限度額の申請を。最期に着せたい服は早めに選んで、着せられなくなっちゃうので」
何回くり返してきただろう淡々とした説明を、それでもつたう雫で意を示す救命担当医療事務さん。
「もちろん。一緒に入りましょう。」
死後処置に同席したいと希望した際、柔らかく即答してくれた主治医に。
わたしの本業は看護師である。ひょんと『編集思考』と出会って 1 年半。合間休憩はさみつつ道場の 2 時間を味わうために参加してきた。そんな折、ひょんとした夫の頭部外傷いわゆる脳死。白鶴酒造のサイトに飛んで、レビューを書こう。在宅で、お仕事できるようになるんだから。自発呼吸はなくとも、返事もなくても、オムツだろうとチューブのご飯だっていい。おうちに、帰ろう。大丈夫、おうちにいるから、一緒に帰ろう。
平均寿命の半分こをした場合、いくつまで生きるだろうか。男性 81.64 歳/女性 87.74 歳(厚生労働省:簡易生命表2020)。ありふれた暮らしの、味見と言って半分こ。いま願う都合の良い、いのち半分こ。大きな波にのまれ仕方もない。「土俵際スレスレ」の一日を 2 年くらいと換算過ごして、その日わたしは101 歳になった。
今日か明日か、病室のキャビネットの奥、出番まで。酵母よ、またも待たせてしまって、すまんなぁ、と。ところが『末期のみず』はあっさり却下。フラットの波形を心にとどめ、持ち帰ったこの1本。選ばれし満月の夜に、まあるくて、まんまるな味。詰まったのどにやんわりはじける炭酸で。耐えてきたつま先にゆび先に、喪ったあたたかさに似るあの日常に、ぬるく包まれる。行ってらっしゃい。送りだす。
世が世ならば、たくさんの人が集う通夜の席でふるまって「お日様みたいな人だった」とくり返し偲んだだろう。3%のアルコールも丁度いい。「お気をつけて」「ご自愛くださいね」と続けただろう。22 年の圧倒的な幸せに、もそもそとした真っ暗な不在に沁みたんだろう、な。
筆者は、東京都在住。DEMO くらし編集部『編集道場』には、オンラインで参加している。
2021 年8 月下旬、白鶴酒造株式会社さんの新商品が話題に挙がり、レビューをシリーズ化する企画が検討され始めていた。そんな中、夫が、早朝出張へ向かう途中に誤って転倒、後頭部を強打し外傷を負う。いわゆる脳死のような状態のまま、1ヶ月を過ごし亡くなる。外因死検案のため、死亡直後より警察が介入。入院していた病院近くに借りたホテルで、一人、空白の夜を明かす。
日本酒になじみのない方に向けた新感覚のこのSAKE(酒税法上はリキュール)は、爽やかにレモン香る、スパークリングタイプの日本酒カクテルです。
スパークリングの喉越しの良さとAlc.3%の軽やかさによって、シーンを選ばずに手軽に・気軽にお楽しみいただけます。
鶏の唐揚げ、チョレギサラダ、ポテトチップス(塩味)、イチゴのケーキなどとのペアリングがおすすめ。
(白鶴酒造 いい白鶴ネットショップHPより)
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