蔵開きは儀式か。宴か。 〜 2020年秋 白鶴酒造「酒蔵開放」オンライン〜

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<<<「ちゃんと」と「ラフ」のあいだ。

画面越しに「仕込み」の性分を感じた。

「とはいえね、『酒蔵開放』のコンテンツはバランスを取るようにしています。初めて訪れてくださった人にたのしんでいただくのはもちろん、ツウの人の『知りたい』『酒造りの雰囲気を感じたい』にも応えられるように、例えば工場見学メニューを充実させたり」

工場見学といえば、今回は、ふだんの「酒蔵開放」では見学できない本店二号蔵工場(主に大吟醸を仕込んでいるそう)や物流工場を案内してもらいました。

「閉ざしてきたわけではないですが、特段オープンにしていなかったところではあります。せっかくなので今までと違う場所を見てもらえたら、会社の内部のギリギリまで見てもらえたらと企画しました。そういった場所への“潜入”も、お酒のアテにたのしんでいただきたくて」

「撮影禁止」の張り紙の向こう側を覗かせてもらった場面は、ほんとうに潜り込んでいるようでドキドキしました。工場内部でWi-Fiのネットワークが途切れがちなのも、得も言われぬライブ感があったりして。 

そうなのだ。この日は時折、画質や音声のトラブルに見舞われた。白鶴酒造ともあろう企業が、リハーサルなしで本番に臨んでいるわけはないでしょう。それでもライブ配信中は、いろいろ起こる。

(ライブ画面に突如現れるログオフ警告)

ハプニング発生のたびに、現場は大慌てだったかもしれません。でも、画面越しに緊迫感はゼロ。コメント欄で「ライブ画面にパソコンのポインタが表示されています」という声が寄せられれば、出演者が「こんなコメントが届いていますよー」とカメラの後ろの人に伝え、解消されたのちに「ちゃんと消えましたか?」と視聴者側に確認してくれる。イベント会場と視聴者とのあいだに、大量のコミュニケーションが流通していたのでした。

私の目にはその模様が「焦りゼロ」のように映ったのだけど、あとあと考えると、もしかしたらそうではなくて、酒蔵には「困ったときは耳を澄ませよ。コミュニケーションすべし」といったカルチャーがあるのかもしれない。

白鶴酒造の杜氏・伴さんは、この記事で「酒造りと言っているけれど、われわれが、酒を造っているわけではないんですよ。造るのは、酵母と麹。彼らが、というか、奴らが(笑)。我々は直接酒造りをしているわけではないんですよ」と言っていました。

考えられる範囲すべてに手を尽くして、仕込む。でも、発酵(ライブ)がはじまったら、こちらに主導権はない。観察とコミュニケーションで察知して、手を打つだけ――― ゆえの胆力。

この仮説も大岡さんにぶつけてみたけれど、「いやぁ、どうでしょうねぇ」と頭をポリポリかかれただけでした。