文:山本しのぶ 画像制作:十倉里佳
「ほいくえんいかない」
さっきまでぐずっていた2歳の息子を後ろに乗せて、自転車を漕ぐ。
どこかから金木犀の香りがして、すぐに消えていった。
今日のBGMはどんぐりころころだ。
「今日は夫が迎えにきます。よろしくお願いします」
園の先生にそう伝え、急いで自転車を自宅の駐輪場まで戻し、職場に向かう。
週に一度、夜に開催される学生向けオンライン講座のサポートに入っている。
以前は、息子を迎えに行き、夕食を食べさせてから、夫に後を任せてその仕事に入っていた。最近は、この日だけはお迎えから寝かしつけまですべて夫に頼み、その仕事が終わってから帰宅している。
いくつもの長い長い夜を超えて、夫婦関係も変化しているみたいだ。
仕事終わり。誘われて、一杯。
一日の終わりに日本酒をひとくち飲む。これがなかなかいいものだということを知った。
ほのかに酔って、すこし赤くなった顔をマスクで隠して帰宅する。
夫はすでに眠っていた。
ああそれならば開けてみよう。
秋のお酒、ひやおろし。夏の熟成を経て出てくるお酒で、飲む時期によっても味が変わっていくらしい。
秋風が連れてくる豊かな香りがふわぁと広がり、風の強さですーっと消えていく。そんな味わい深くも不確かな季節を、何度も口に含んで確かめる。
もうひとくち、もうひとくち。
さて、と。
今度、夫にあることを伝えてみよう。
彼はどんな反応をするだろうか。
兵庫県産山田錦100%の本醸造酒をひと夏熟成させ、旨味が乗った頃合いで生詰めしました。
「特撰 山田錦」シリーズの秋季限定商品(9月~11月頃)です。
“ひやおろし”の円熟したまろやかな口当たりと、兵庫県産山田錦100%で醸した本醸造酒ならではの上品なコクをお楽しみください。
(白鶴酒造HPより)
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