特別企画インタビュー

役立てられて、大事に扱っていただけてありがたいです。ー 酒米・白鶴錦の稲わらで畳をつくる。インタビュー① ー

聞き手・文:山本しのぶ

東京・銀座にある白鶴ビル。
その屋上で2007年から、酒米である白鶴錦を育てる「白鶴銀座天空農園」という屋上緑化プロジェクトが続いています。

今回、2020年秋に収穫された白鶴錦の稲わらを使って、神戸にある白鶴酒造資料館に展示する置き畳を作るプロジェクトが実施されました。

日本酒と畳が出会うとき、そこにどんな思いが生まれたのか。

一枚の畳にまつわるストーリーをプロジェクトにご協力いただいたみなさまにお聞きしました。

プロジェクト全体 特別企画:酒米・白鶴錦の稲わらで畳をつくる。

インタビュー
1.(白鶴錦栽培)役立てられて、大事に扱っていただけてありがたいです。
白鶴銀座天空農園 山田さん・福本さん、白鶴酒造広報 大岡さん

2.(畳床製作)どなたが乗っても畳自体のあたたかさを感じていただけるように。
須賀利三商店 須賀茂春前社長

3.(畳製作)日本酒と畳。日常的でもあり、神仏に近づくところにあるものでもある。
岡田畳本店 岡田暁夫社長

白鶴錦栽培の白鶴銀座天空農園 山田さん・福本さん、白鶴酒造広報大岡さんへのインタビュー

こんな環境じゃ育たないんじゃないかと言われていました。

ー白鶴銀座天空農園はどうやって始まったのですか。

大岡さん(以下、敬称略) 2004年に白鶴錦ができて、登録されたのが2007年。そのタイミングに合わせて、日本の中心である東京・銀座から日本酒文化や日本文化を発信したいとの思いで屋上緑化の一環として始まりました。近隣の小学生に田植えや稲刈りを体験してもらうなどの食育イベントも行ってきました。

ーお二人は普段はどのようなお仕事をされているのですか。

山田さん(以下、敬称略) 白鶴酒造の東京支社の広報営業サポート部に属し、主な仕事は広報と営業事務。天空農園はこちらの部署の7名が担当し、稲刈りや田植えなどの大きな作業では支社全体に声をかけてやっています。私自身は今年から天空農園のチームリーダーをしています。

ー屋上で酒米を育てると聞くと、とても大変そうに感じます。

山田 やはり生きもの相手なので天候やお水の管理は気を使いますね。屋上は風も強く、また、食用のお米よりも酒米は背が高いので風には特に気を使います。屋上だから重量制限もあるので、土も屋上緑化用の軽い土を使っていて、しかも通常は土の高さが60cmくらい必要ですがここは15cmくらい。稲にとっては過酷な環境だと思います。

ーそれでもしっかり育ってるんですね。

山田 初めはこんな環境じゃ育たないんじゃないかと言われていたんです。でも、2013年にはお酒にできるくらいの品質のものができるようになって、収量も上がってきています。今では、1700株から籾つきで約50kg、精米して35kgくらい獲れて、500mlの瓶で40-50本くらいのお酒になっています。それは銀座の百貨店で限定販売されて、毎年買っていただいている方もいるんですよ。

ーそうなんですね。

山田 お酒造りは神戸の工場でするのですが、仕込みはすべて手作業です。

福本さん(以下、敬称略) 仕込みのタンクも給食を作る大きな鍋くらいの大きさ。それを大勢の人が囲んでやってます。

うちで獲れた稲わらが畳を支えてる。嬉しかったです。

ー今回の畳のプロジェクトを聞かれた時はどうでしたか?

山田 畳のこともよく知らなかったので、初めはどこに稲わらが使われるのかなと。上のいぐさの部分に使うのかなと思ったくらいでした。

稲本 かなりたくさんお渡ししたので、何枚できるのかなくらいに思ってたんです。それがぎゅうぎゅうに圧縮されて、一枚がやっとというのが驚きでした。

山田 実際にできたものを見た時は、うちで獲れた稲わらが畳の土台になっていて、畳を支えているというのが嬉しかったです。踏み心地がしっかりしていてずしんと重みを感じました。畳ってこんなに重量感のあるものなんだなって。
畳を制作していただいた岡田さんにいわれなども教えていただいて、思いをこめて作っていただいたんだなというのが伝わってきました。特別な感じがして、大事に扱っていただけてありがたかったです。

ー天空農園で獲れた稲わらが畳になってどうでしたか。

山田 これまでは使い道がなくて処分に困っていたくらいなんです。しめ縄に使えるかな、くらいで。なのでそれが役立てられるんだというのはありましたね。実は今年(2021年)の稲わらは、近隣の飲食店さんに声をかけていただいて、わら焼きに使っていただくことに。畳をきっかけに稲わらを活用する方法があるんだと気づきました。ビルの屋上でできた白鶴錦が、お酒も畳にも料理にも使われていくというのは嬉しいですね。

白鶴銀座天空農園
白鶴酒造東京支社のある、東京・銀座の白鶴ビルの屋上で2007年より始まったプロジェクト。銀座から日本酒文化の発信を目指し、白鶴錦の栽培を行っている。食育や国際交流の場としても活用されている。
(白鶴銀座天空農園についてはこちらから

執筆者プロフィール

山本しのぶ(神戸市在住・1982年生まれ)
山本しのぶ(神戸市在住・1982年生まれ)
夫・息子と三人暮らし。作業療法士の資格を持ち、その人らしい暮らしや生き方をサポートをしていきたいと考えている。普段はのんびりしているが、気になることにはどんどん突っ込んでいく。食べることや手仕事をすること、旅行に行くことが好き。