文:やすかわのりこ
Free Sake, Swing Lesson and Live Swing Band
一生モンの大人の嗜み。
マニュアルでは表現できない、健全なるお酒の楽しみ方。
ジャズが「これでもかっ!」ってくらいお似合いの港町・神戸。その神戸の「伝統と継承」日本一の酒処、灘五郷の中に、江戸時代から続く白鶴酒造がある。今宵、白鶴酒造資料館(大正初期から昭和44年まで稼働していた本店一号蔵を改装)のスペースを地域の皆様に開放し、日本酒を振舞うイベント「日本酒+スイングダンス」を開催。約130名もの人々がスイングダンスを体験するために集結。なんとなく無謀、そして、手放せない期待感。そこには、日本酒に対して個々人が抱くメリット、デメリット。例えば、「リラックス効果」や「酩酊」などの要素に、スイングダンスの持つ「激しい動き」や「初対面の人と接する緊張」が入り混じっている。
飲む、飲む、とにかく良く飲む。カウンターには、入れ替わり立ち代わり人が押し寄せる。用意された数種類のお酒の試飲のコンプリートを目指す人も少なくない。大吟醸はイベント半ばで飲み切ってしまったため、急遽、違う種類を用意するほどで、イベントの終盤には、ノンアルコールの甘酒などを含めすべて出てしまった。こんなことは、これまでのイベントでは、なかったかもしれない。
フロアは、音楽と人で溢れかえっている。年齢も、国籍も、男も女も全部、ごちゃまぜ。スタッフでさえ「一緒に踊ろう」の一言で、引っ張り出されてしまうのだ。「ここにいるってことは、楽しみに来たって事。なら、踊れ。楽しめ!」ロジャーがダンスで火をつけると、ライブのパフォーマンスに飛び火して、さらにロジャーのMCが煽るから、とうとう会場全体に舞い広がった。みんな踊り足りないのか、アンコールをおねだり。しまいには、楽隊も大勢の中に紛れ込み、サンボのトラみたいに輪になってぐるぐる回り出す。もうだめだ、歓声と拍手の雨あられの中、とうとうみんなは、お話通りバターになってとけてしまった。
今回のイベントの最大の収穫は「大人の嗜み(たしなみ)」ではなかろうか?
①好み。また、趣味や余技。②芸事などに関する心得。③つつしみ。節度。④普段の心がけ。用意。
「嗜み」の意味を辞書を調べると、ざっとこんな感じだ。イベントの写真を見て頂ければわかるように、この会でグテングテンに酔っぱらい、周りに迷惑をかけた参加者は全くおらず、けが人も出なかった。マニュアルには、言葉だけでは伝えきれないグレーの部分がある。そこに古くから日本に在り、日本人らしい美学ともとれるこの言葉をいつも胸ポケットに忍ばせておけば、日本酒に限らず、一生ものの大人の楽しみを「嗜み」に昇華できるような気がする。
ところで、「なぜ、日本酒にスイングダンスなの?」と解せない方のために、参加者の素敵なご婦人の言葉を紹介させていただきたい。「日本酒と古い時代の音楽とダンス、そして、ファッション。そう考えるとすごく似合っている。スイングは、バーでも良くかかっていて、踊れる方に『踊りませんか?』と手を引かれ、誘われて踊る。だから、お酒と踊りは、いつも一緒かな」。新たなる挑戦は、いつでも、幾つから始めてもいいじゃないか。この人生は、だれが何と言おうと「あなた」のものだから。
(↑ 当日配布ペーパーより)
− 地域の皆さんの「やってみたい!」を、酒蔵で −
江戸幕府第8代将軍吉宗の時代からずっと、日本一の酒処・灘五郷の地で「時をこえ 親しみの心をおくる」お酒造りを続けてきた白鶴酒造。白鶴酒造が大切にしてきた酒蔵(白鶴酒造資料館)と日本酒を地域の皆さんに提供し、活動を応援するプロジェクトが《みんなの白鶴御影校》です。
2018年度はオーディションの結果、今回の「Swing Dance Kobe」のほか、「名前はまだない」と「さくらムジカオーケストラ」がイベントを開催しました。
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▶︎オーディションレビュー:「聞かせてよ、みんなの夢!」
▶︎「名前はまだない」イベントレビュー:「日本酒カクテルで乾杯。農家さんと話してみよう!」
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