野燗炉にお願い!vol.02

野燗炉で、大人のママゴト

写真と文:中埜久仁子

野燗炉は大人のママゴトなのか?そんな疑問をもったまま、私の野燗炉が始まった。
きっかけは編集道場(DEMOくらし編集部の編集会議)だ。野燗炉をレンタルできることになり、野燗炉を製造しているJIPANG-WORKSさんに使い方を聞いた時、担当さんは「ママゴト感覚で楽しんでください」と言う。「ママゴト? 私、毎日ママしてますけど? ええ歳の女がママゴトなんかできるか?」そう心の中で毒づいた。
その半月後、我が家に野燗炉が届いた。野燗炉に興味津々の娘は、道具を広げるなり「遊んでいい?」と。野燗炉をままごとセットのように遊び出す。野燗炉はやっぱりママゴトなのか?

そもそもママゴトとは何だ? 自分なりに定義してみる。

  • 女の子たちが集まってするごっこ遊び。
    たまに男子も混じることがあるが、男の子だけが集まってママゴトをしているのを今まで見たことがない。
  • お母さんや、赤ちゃん、ペットなどそれぞれが役割を決めて、その役を演じる。
  • 玩具の食器など、道具を用いる。

私も子どもの頃、ママゴトが大好きだった。近所の女の子たちと、庭や空き地にゴザを敷き、ママゴトセットや古くなった調理道具を母から譲ってもらい、泥に雑草を混ぜてスープなどを作った。お母さん役はおばちゃんなんで人気がなく、お姉さん役を奪い合った。

大人のママゴトは、子どもの時とは違う。毎日ママをしているし、子どもの頃に比べて知恵や経験も増えている。それに反比例して、ストレスやシガラミにもまれて暮らしているのだ。大人になって本気で遊ぶママゴトは、BBQとは違う。
海に行くから、キャンプに行くから、BBQでもするか?軽く始められるのがBBQのよいところ。野燗炉は、誰とするのか? どこでするのか? 何を食べ、何を飲むのか? きっちり設計しないとできない、とびきり贅沢な遊び=ママゴトではなりだろうか?

■大人のママゴトその1:大好きな女友だちを集める

40歳を過ぎてからママになり、娘が0歳から通った近所の保育園。

気づくと、素敵なママ友がいっぱい。娘が小学生になっても、隣の区に引っ越しても、毎月のように会っている。「私たちをつないでいるのは何?」みんなに聞いてみた。みんなは声をそろえて「お酒」と言う。
そうだ。私たちはお酒が大好きで。子どもが嫌がるくらいのお酒を飲む。朝から飲んでいるときもあるし、泊りで飲んでいるときもある。お風呂だって一緒に入る。文字通り裸の付き合いだ。

まなちゃん いつも買い出し担当。大人数のキャンプや大きなイベントでは、コストコなどで大量の食糧を買ってきてくれる。
みちよさん 6年生の長男くんがいるので、いつもママたちの悩みに的確に答えてくれる。
えりさん 飲食関係の自営業。しかも毎週キャンプに出かけるアウトドア派だ。
なっちゃん いつもやさしい癒し系だが、一番の理論派。
今回のお酒 白鶴上撰。酒豪のメンバーにはちょうど良いサイズ。でもちょっと足りないかも…。
■大人のママゴトその2:贅沢な空間を演出する

大人のママゴトセットは野燗炉だ。アウトドアショップで売っているBBQセットとは一味違う。職人さんがハンドメイドで作り上げたアウトドアの熱燗セットだ昔の大人は、こんな道具を使って優雅にアウトドアで熱燗を楽しんだらしい。現代の私ならどうする?
私は絶対、昔の風流人たちのように、野外で野燗炉がしたい。海か山か?海に熱燗は似合わない。山だ。前回のリベンジもしたい。
山で直火を使え、子どもたちも安全に遊べて、大人は熱燗に集中できる場所。私の頭に浮かんだイメージを実現できる場所が一つあった。六甲山にある653cafeだ。

653cafeを経営する会社に頼み込み、社長決裁を経て、利用許可を得た。大人のママゴトには交渉力も要るのである。

夏休みが終わりに近づいた土曜日の夕方、私たちは653cafeの庭を貸し切り、熱燗に没頭した。(子どもたちの食事は別にcaféでオーダーして食べさせてもらった。)
自宅から近い山にケーブルで上がり、公園のような森のカフェでプライベート野燗炉。大人のママゴトには、贅沢な舞台が必要だ。

■大人のママゴトその3:役割を演じるのではなく、効率よく役割をこなす

大人のママゴトは、誰がお母さん役をするかで揉めない。だって、みんな本当のママだから。
おまけにみんなが仕事をしているので、効率を重視、役割分担も決めた。

私:当日の機材運搬。野燗炉思ったより大きく重量感もあるので、朝、車で653cafeに運び、倉庫に入れてもらった。
まなちゃんとなっちゃん:食材を買い出し担当
みちよさん:追加のお酒を買い出し
えりさん:毎週キャンプに行くだけあって、炭の火付け役を自ら買って出た。

野燗炉の決行日の前週、近所のファミリーレストランで作成会議を開き、担当と作業を決めた(ただ昼呑みをしたかっただけかもしれない)。
人数も多いし、時間も限られている。よって炭は野燗炉に付いているロウソクで火をつけるのはやめて、BBQ用のバケツを使い、炭に着火させることにした。

えりさんは、野燗炉を使わない肴もたくさん作ってくれた。

■大人のママゴトその4:お酒を楽しむ

大人の愉しみはやっぱりお酒だ。野燗炉に敬意を称し、お猪口はドレスコード(家で一番高価なお猪口)を決めた。
野燗炉では、出始めの松茸(残念ながらカナダ産だ)を焼いた。
昔の人は、野燗炉を囲んで何を話したのだろう。
大人のママゴトでは、話題は、残念ながら普通のママトーク。お受験事情や習い事、夫の悪口など・・・。

私たちにお酒は必需品。酔うために飲んでいるのではない。お酒を飲んでいる時間が楽しいからだ。

大人のママゴトは、素敵な女友だちと美味しいお酒、贅沢な空間がないとできない。「野燗炉は、ママゴト感覚で使ってください」の言葉は本当だったのだ。

今回の野燗炉、昔の風流人との距離が縮まったと言ったら、一笑に付されるだろうか?

野燗炉にお願い! vol.02 総まとめ
▶︎何を願って 
仲よしのママ友と、アウトドアで優雅に熱燗を楽しみたい
▶︎いつ 
夏休みが終わりに近づいた土曜日の夕方
▶︎どこで 
653cafe(六甲山上のカフェ)を特別に貸切りさせていただきました。最終のケーブルの時間まで私たちにお付き合いいただき、感謝です。
▶︎誰と お酒好きなママ友4人と
▶︎何を食べ 
カナダ産松茸とハタハタをメインに。他は持ち寄りの肴で・・・
▶︎何を飲んだ 
白鶴 上撰

「ひやでも燗でも飲み飽きしない白鶴伝統のお酒。今回はパック酒で身軽に。」by. 白鶴酒造 植田


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執筆者プロフィール

中埜久仁子(神戸市在住・1968年生まれ)
中埜久仁子(神戸市在住・1968年生まれ)
生粋の大阪人。小学生の娘を持つ高齢ママ。20年ほど広報の仕事をするも、現在は六甲山の麓で人生修復中。子どもたちの笑顔と旅とお酒が好き。阪神ファンではありません。