日本酒、どう楽しんでる? vol.01 後日談

あれからどうしてますか?〜晩酌をはじめた夫婦の1年後〜

文・画像制作:桂知秋

「終わりかけだった」夫婦のカンケイを変えた晩酌タイムのお話を聞かせていただいてからちょうど1年。あれからどうしているんだろう?晩酌タイムが盛り上がっているかもしれないし、関係も変わっているかもしれない。いや、逆もあるだろうし、そもそも晩酌タイムがまだ続いているかもわからないもんな、、、と少し不安な気持ちがないわけではなかったけれど、聞いてみた。あれからどうなんでしょう?

「新しい」から「生活」に。

「今のところ、あのまま続いてますよ。あえていうなら、あの頃は『新しいこと始めたな』っていう感じだったんですけど、今は『晩酌が生活になってきた』っていう感じかな。特に二人がより仲良くなった、とかそんな変化はないんですけど(笑)」。

ふむふむ、晩酌のある生活は続行中。「変化がない」はさてや照れ隠し?それとも本当に何もないものだろうか。

「うーん、変化と言えば、台所に二人で立つことが増えたかもしれない。最初は私が日本酒とか晩酌自体をおもしろがっていたから、アテも私がおもしろがって作ってたけど、だんだん夫も熱がはいってきたのかな、私が子供のご飯作ってたら横で今日のお酒にはこれが合いそうだから、とか言いながら何かアテを用意していたり。そんな大袈裟な料理ではないんですけどね」。

相手のことを想ってやってるわけではない。だけど想ってる。

アテを用意する時間って、これから呑むお酒の味を想像したり、呑みながら過ごす時間そのものに想いを馳せるような、ちょっとワクワクする時間だったりする。あれ?さらに楽しそう。やっぱり変化しているのでは?と他人ながら少し興奮して聞く。

「お互い好きなものを作ってるだけなんですけどね。でも自然とチームみたいな感じになってきたのかも。『楽しく呑みたいチーム』みたいな。ほんとに今まで、好きな映画も本もスポーツも違うし、なんの話も合わなくてなんで結婚したんだろうって思うくらいだったから、初めて共通の趣味ができた、っていう感じなんですよね。

お互い仕事帰りにはストック用のアテも買ってきたりとかして。なんかね、これが付き合いたての頃のクリスマスみたいに、ケーキ買ってきたりディナー用意したり、「一人で頑張ってる」っていう感じだとしんどいのかもしれないけど、相手のことを想ってやってないけど想ってる。そんな距離感なんですよね。その感じがうちの夫婦には自然でいいのかもしれない」。

醸されていく期待感。

お互い真っ正面から向き合うわけではないけど、日本酒を真ん中に関係性が回りはじめている。そんな感じだろうか。

「うん、関係が『醸されて』いっている感じがするんですよね。同じものを呑みながら、美味しいね、と言い合ったり、寒い日に初めて熱燗してみたり、時には私が味を解説して夫にめんどくさがられたりして喧嘩もしながら(笑)過ごしているだけなんですけど。相手をどう変化させてやろうかと企んだわけでもなく、そうやって季節や時間の積み重ねで自然と変化してきたから、『醸される』という言葉がとてもしっくりくる」。

麹が発酵して日本酒ができるように、意図的でなく1年かけて夫婦の関係もゆっくりと変化しているよう。でも「私たち晩酌し始めて1年だね、とか二人で話したりします?」との問いには、「ないない!向き合って話をすることは残念ながらいまだに絶対ない!」と言い切る彼女。

「きっと夫も、お酒を一人で呑み始めたら気がついたら一緒に呑んでるな、くらいの意識だと思います。でも、子どもたちとご飯を食べ終わって、改めてお酒を呑むために席についている時間が生まれているだけでいい。何を語るわけでもなく、ただ話をゆっくりできる。子どもの幼稚園の話とか他愛のない話ですけどね。それって多分、他の夫婦からすると、マイナスだった関係がゼロになった、ぐらいの話だと思いますけど(笑)」。

でもね、と彼女がいう。「マイナスからゼロでも、こうやって小さくても変化があった、ってことは私の中では大きくて。これから子どもの手が離れたりしたらもしかしたら変わるのかな、とか思えるようになった。『醸されていく期待感』みたいなものが私の中に生まれてきているのかなって。もしかしたら、真っ正面から語り合える日が来るかもしれない。いや、それはうちの夫婦には絶対ないか(笑)」。

執筆者プロフィール

桂知秋(神戸市在住・1978年生まれ)
桂知秋(神戸市在住・1978年生まれ)
英字情報誌スタッフ、地産地消活動団体の広報、三姉妹の母、フリ−ランスのデザイナー、なんかの通り道があるけれど、呑んで・食べて・暮らすこと、がいつも人生の真ん中。