文:やすかわのりこ 写真:大森ちはる
元・酒蔵に出現! ようこそ、コドモとオトナの遊び場へ。
君たちのメトロノームは、1分間に何回胸を打ったんだい?
酒蔵を改築した白鶴資料館のイベントホールに時代劇メドレーが流れている。演奏するのは、「さくらムジカオーケストラ」。暴れん坊な将軍が、白馬にまたがり野山を駆けまわっていた頃、日本一の酒処・灘五郷では、腕のいい丹波杜氏たちが粛々と丹精込めて酒造りに励んでいただろう。当時、この辺りで造られた日本酒は、船で江戸まで運ばれると「下り酒」と呼ばれ、江戸っこの舌を大いに楽しませていた。どこぞの八丁堀の旦那も晩酌に白鶴酒造の日本酒でキュッと一杯やっていたかもしれない。そのくらい、この会社の歴史は長いのだ。
さてさて、お話は続きます。5名の演奏家がフルート、ファゴット、チューバ、コントラバスなど、今回使用する8種類の楽器を次々に紹介していく。おやおや、音の高い楽器より、低いものがお好みかい? 徐々に集中力が高まっているね。演奏される楽器から目を離せないでいる子もいれば、小さな手を無限に開いて宙に振る子、夢の国にうつらうつらと舟をこぎ出した子もいるよ。離れ小島のように3つ並んだ畳は、のんびりぷかぷかと、時のまにまに浮かんでいるよう。正座するひざの上に律義に握られたこぶし、くたびれて崩れた足、お母さんに身を任せて伸びる背中。なんの隔たりもない畳の上に座れば、お隣さんは、ドキドキを共有する良き友に変わるみたいだ。突き抜けて楽天家、それでいて繊細。君たちのメトロノームは、1分間に何回胸を打ったんだい?
感じたことを感じたままに表現する小さな巨人に、振り回されがちな大人たち。本日は、「大人だって楽しみたい」を叶える準備もできています。お酒に加えて甘酒を3種類ご用意。「子どもから目が離せない」「授乳中だから」という方も大丈夫。親子で飲むことができるし、自分の好みの味を選べる楽しさも味わえる。お子さんがめでたく二十歳を迎えたら、次は日本酒片手に、思い出話に花を咲かせてくださいね。ところで、名前に「酒」が付くためか、アルコール飲料だと思われがちな甘酒。家で手作りされている方や、「飲む点滴」と呼ばれ知名度が上がりつつありますが、「甘酒」ってどういった飲み物なのか、知らないことも意外に多い。これはもう、「ひとりノリ突っ込みが必要な飲み物です」……なんて笑いごとではすまないので、ここで説明するよりも白鶴酒造ホームページで教えていただくのが賢明に思う。
とうとう、お話はおしまい。日本一の酒処の一つ「御影郷」で美味いお酒を造り続ける白鶴酒造と、地域で頑張る皆さんが共に造り上げるイベント「みんなの白鶴御影校」は、おかげさまで無事に全て終えることができました。ご協力、ご参加くださった沢山の方々に感謝いたします。
窓を打つのは、春の嵐。新しい季節が始まるんだね。さみしくなったら遊びにおいで、みんなの白鶴酒造資料館へ。
− 地域の皆さんの「やってみたい!」を、酒蔵で −
江戸幕府第8代将軍吉宗の時代からずっと、日本一の酒処・灘五郷の地で「時をこえ 親しみの心をおくる」お酒造りを続けてきた白鶴酒造。白鶴酒造が大切にしてきた酒蔵(白鶴酒造資料館)と日本酒を地域の皆さんに提供し、活動を応援するプロジェクトが《みんなの白鶴御影校》です。
2018年度はオーディションの結果、今回の「さくらムジカオーケストラ」のほか、「名前はまだない」と「Swing Dance Kobe」がイベントを開催しました。
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▶︎オーディションご案内ページ:「酒蔵を、無料でイベントスペースに使えます!」
▶︎オーディションレビュー:「聞かせてよ、みんなの夢!」
▶︎「名前はまだない」イベントレビュー:「日本酒カクテルで乾杯。農家さんと話してみよう!」
▶︎「Swing Dance Kobe」イベントレビュー:「Hakutsuru Swing Festival」