神話と日本酒 vol.01

日本書紀「この神酒は 我が神酒ならず 倭なす 大物主の 醸みし神酒」(奈良・大神神社)

1ページ目:《神話①》杜氏の祖先、たった一夜にして美酒を醸す。
2ページ目:《神話②》この木には、白蛇の姿を変えた神様が住んでいる。
3ページ目:三輪山のご神木でつくられる「しるしの杉玉」。

神話② この木に白蛇の姿を変えた神様が住んでいるらしい。

もう一つ大神神社にはお酒と関わる伝説がある。白蛇伝説だ。

巳の神杉
境内にたつ大杉には、祭神である
大物主大神主神が姿を変えて現れた白蛇が住むと言う伝説がある。

崇神皇の御代に神意を伝える巫女として天皇のまつりごとを助けた倭迹迹日百襲姫(やまとととびももそひめ)という方がいて、この姫が大物主大神の妻となる。
だが、大神は夜にしか姫のもとを訪れず、姫は「貴方様の顔をはっきり見たい」と大神に願い出た。願いを聞き届けた大神は、白蛇に姿を変え姫の櫛箱の中に潜んで待つのだが・・・。そんな伝説の
ある大神神社で、蛇は「巳みさん」と親しみを込めて呼ばれており、福徳をもたらすとして崇められている。
人々はその白蛇に姿を変えた神様のために、日々、卵とお酒を捧げる。
大神神社HP参照)

事前にこの伝説を知っていたものの、生卵を持って電車に乗るわけに行かず、手ぶらで出かけた私たち。

あずみ「調べたら、白蛇の好物の卵とお酒をお供えするんだって。どうしよう?」
のり「現地調達できないかな?コンビニとか・・・」

そんな話をしながら私たちは現地に着いたが、驚くほど参道にはお店がなかった。「ゆでたまご」と書かれた看板はあるものの、どうやらお店は閉まっている。

あずみ「キン肉マンのゆでたまご先生が出て来たらどうする?」
のり「そうです。あのゆでたまごです。ここに住んでますってね」

そんな話をしながら、やっと見つけた一軒のお店『今西酒造』。唯一お酒の聖地である「奈良・三輪」で現存している酒造の店舗だった。

あずみ「あのー、お供えのための卵とお酒はありますか?」

とおずおずと聞いてみると、あった! 卵と小さい瓶のお酒。ついでにお店のお酒を試飲しようとするのりちゃんが、

女将さん「先にお詣りしてらっしゃい」

とたしなめられる。

いかん、いかん。危うく大神神社にたどり着けなくなるところだった。参った後に、また来よう。

そして辿り着いた、拝殿の手前に高くそびえる杉の木。巳の神杉と呼ばれているらしい。樹齢は500年。

あずみ「この木に白蛇の姿を変えた神様が住んでいるらしいよ」
のり「それは早速おそなえせないかんね」

今西酒造で買って来た卵と「三諸杉(みむろすぎ)」を取り出す。

あずみ「よいしょ。これでいいんかな?」

のり「うん、バッチリだと思う」
あずみ「卵パックごと供えられていたり、いろんなお酒があるね」
のり「『まる』もある。さりげなく」

そう、とてもさりげなく。『まる』もいた。

白蛇の姿を見ることはできない。でもずっと昔から、見えない白蛇のために、人は卵とお酒をささげてきた。山や杉や白蛇に、神様を見出して。

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三輪山のご神木でつくられる「しるしの杉玉」。